学校近くの廃墟にあった開かない金庫の話
投稿者:ねこじろう (147)
長編
2024/06/04
14:45
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机上方の壁には誰なのだろうか、立派な額に入った中世ヨーロッパ王妃の油絵。
鶯色のドレスを纏い、こちらを見ながら微かに微笑んでいる。
机の真横には子供の背丈ほどの大きな古びた金庫があった。
その金庫を見た瞬間、森本は
─あった!
と小さく呟く。
そして同時に彼の脳裏には20年前の光景が動き出す。
※※※※※※※※※※
「卓くん、探検しようよ!」
ボーダー柄のラガーシャツに半ズボンの飯島が言った。
放課後、既に誰もいない6年3組の教室。
その室内後方の椅子に座った森本卓と飯島学が、学校裏手にある古びた洋館の噂話をしている最中のことだった。
好奇心旺盛な飯島の誘いに半ば押される感じで、しぶしぶ気の弱い森本はそこにに行くことになったのだ。
二人は学校裏門から出て公園、竹藪を横切り、洋館風の廃墟に行き着く。
そして入口から中に入った。
飯島は大理石調の床を歩き進み螺旋階段を上りきると、渡り廊下を歩きながら廊下沿いのドアを開いていく。
びくつきながら後に続く森本。
そして彼が他の部屋を覗いていると突然飯島のくぐもった叫び声が聞こえた。
「卓くーん!助けてー!」
彼は急いで奥の部屋に走る。
立派なマホガニーの机の真横にある、自分の背丈くらいの大きな金庫から声は聞こえていた。
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