お告げ
投稿者:綿貫 一 (31)
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この話は、いったいどこに落ち着くのだろう?
ヒナコは当初、「相談がある」と言って、私を呼び出した。
飼育小屋の卵に、冷蔵庫から出してきた卵。
そこから生まれ、予言をし、溶けて消える天使もどき。
その予言は吉と凶、どちらの内容もあり得るということのようだ。
なら、彼女が今、私に相談したがっているのは。
「――でね、私、すっかり卵が苦手になっちゃって、料理のレパートリーも少なくなっちゃった。
卵って、いろんなメニューで使うじゃない?
だから、うちの旦那にはいつも申し訳ないなぁって――」
「ねぇヒナコ、アンタもしかして、また天使を……」
脱線を繰り返す彼女の話を、私は思い切ってさえぎった。
早く、続きが聞きたい。
ところが、ヒナコが次に口にしたのは、私の予想外の言葉だった。
「――知ってる?
天使ってさ、甘い味がするんだよ?」
甘い? ――え?
「言ってなかったけどさ、私たち夫婦ね、ずっと子供が欲しくってさ。けっこう前から不妊治療してたんだよね。
でね、こないだ、体外受精を試してみよう、ってことになって。
採取した精子と卵子を体外で受精させて、その受精卵を身体の中に戻したんだけど、なんか今度こそ、うまくいきそうなの。
経過観察は今のところ順調で――」
ヒナコは少し早口になっていた。
窓の外から、ランドセルの子供たちのはしゃぐ声がする。
「――そんな時に、また、天使を見たの。
朝起きたら、枕元に突然、卵があったんだよ?
そんなところに卵なんか置くわけないのに。
でね、呆然と見ている私の目の前で、みるみるひびが入って、穴が開いて、そこから小さな手が出てきたの。
見覚えのある、小さな人の形の手が。
キーキーという、甲高い声が。
やがて、天使が顔を覗かせたの。
その口が、ゆっくり動いて――」
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