事故物件の日記帳
投稿者:太山みせる (35)
皆は祖父を見る
彼は黙って、1冊の分厚いノートを差し出した
それは無地の古いもので、表には『日記』と拙い字で書いてあった
もう褪せて消えかかっているが、花や動物の絵もあちこちに描かれて、色も塗られている
小さい子供が書いたようだ
「事件があったのは、41年前の2月だ。全部読むのは時間が掛かるだろうから、いくつかピックアップして、付箋を付けておいた」
舞はノートを開いた
他のメンバーたちも覗き込む
最初のページはプロフィールが書いてあった
『☆わたし→岸島愛 しょうわ50年7月15日生まれ 小学2年生
☆岸島武→弟 しょうわ53年1月30日生まれ
ようちえん 年ちょう 今度小学生になる
すぐなく
☆パパ→岸島正男 きょ年しんだ 今は天国 大すき やさしい
☆ママ→岸島ゆう子 大すき やさしい たまになく』
次のページから日記が始まる
1個目の付箋のページ
『しょうわ58年10月10日(月)
ママをはげますために、日記を書くことにしました。
手がみだと1回でおわるから、日記はまい日書けるし、だから日記にしました。
ママ、大すきだよ!!!
パパがしんで、ママがはたらくようになって、ママがつかれちゃうから、お手つだいをたくさんします。
いろいろやるから、もう「いっしょにしのう」なんて2どと言わないでね。
わたしも武もこわかったんだよ。』
上の文章の下に、母親が書いたとみられる文章もあった
『愛も武もがんばっているのにゴメンなさいね。天国のパパも見てるし、ママももっとがんばります。もう2どと、「しにたい」なんか思いません。』
次の付箋のページをめくる
『11月4日(金)
今日も学校のあと、セリザワのおじいさんの家にあそびに行った。
今日もべん強を教えてくれた。
武もひらがなを、教えてもらった。
武がないた。
小学生になるのにランドセルがないからって。
おじいさんが、なければ買ってくれるといった。
おじいさん、やさしい。大すき。
ママがかえってきたから聞いたら、ランドセルはもう少ししたらやすくなるから、そのとき買うからだいじょーぶって言ってた。
武、ほっとしてた。よかったね。』
怪談を読んで久し振りに涙が出ました。子どもたちのほうが、ずっと魂レベルが高かったのですね。
ええ子達や🤭
母親の身勝手さにムカつくこれは愛情じゃなく執着。せっかく優しくしてくれたのにどこまでセリザワさんに迷惑かけ倒すねん!と、残念ながら舞さんのように優しい気持ちにはなれんかった。