「盆の舟」
旧盆の13日、私は生後6ヶ月の息子を車に乗せ、夫の実家へ向かうため東北自動車道を北上していました。
夫は、3日前から長期休暇が取れ、一足先に実家に着き、旧盆の支度を整え、買い出しと墓参りを済ませ、私と息子の到着を待っているとのことでした。
仕事をはやめに終え、息子を託児所に迎えに行き、高速に乗ったのは、昼の12時を少し回ったところでした。
時節柄、かなり渋滞しており、このまま ノロノロ運転を続けていては、実家に着くのは深夜になってしまいそうです。
途中何度か休憩を取りながら、乳飲み子を抱えての帰省。それだけでも相当なストレスとプレッシャーでした。
日頃疎遠にしている手前、日をまたいでお邪魔したのでは、夫の両親に申し訳が立たないような気がしました。一瞬躊躇いましたが、グズる息子の声を聞き、小心者でお人好しの私は、高速を降り一般道を走ることにいたしました。
国道4号線。初めて通る道は、民家もまばらで、街灯は、裸電球のように薄ぼんやりとしています。
時速50キロ。それまで追い越し車線をひたすら走ってきたせいか、あまりのギャップに、私の判断は間違いではなかったかと早くも後悔しておりました。
後部座席を振り返り、チャイルドシートの上で、すぅすぅ 寝息を立てている息子に、「お願い、もう少し我慢してね。」と詫び、ブランケットを掛けると、再びハンドルを握り直しました。
しばらく農道らしき道をひたすら走り続けていましたが、気がつくと、国道4号線から大きく左にそれ、いつの間にか、海沿いの県道に変わっていました。
起伏の激しい片側一車線。
既に日は落ち、辺りは海と空の区別がつかないほど闇に閉ざされ、対向車は、一、二台しか通りません。路面も舗装されてはいるものの、凸凹していて、ゆるい傾斜にハンドルが取られます。フラットな状態ではありません。この道は、幹線道路でないことが、すぐに分かりました。
路面ギリギリまで打ち寄せる波。
時折、闇の中に白く高く上る波しぶき。
日が落ちた後の海が、こんなに不気味だとは思いもよりませんでした。
私は、ふと、今日が盆の入りであることを思い出し、再び高速を降りてしまったことを後悔し始めました。
「盆の頃、海に近づいてはならない。」
この時期、必ずと言っていいほど聞く言葉です。
「車の中だし。海の中に入って泳ぐわけでもないから大丈夫。迷信迷信。」
そう言い聞かせ、ラジオのスィッチを入れました。
スピーカーから、ユーミンの名曲「中央フリーウェイ」が流れてきました。
首都高速の混雑と渋滞を思い起こしながら、軽妙なリズムに合わせ口ずさんでいるうちに、多少の起伏と勾配のある田舎道もさほど気にならなくなってきました。
緩いカーブに差し掛かった時、沖に一艘の屋形船が停泊しているのが見えました。
舟の周りには提灯が灯り、海面をゆらゆらと明るく照らしておりました。
目を凝らしてみると、船の中では、宴が催されているようです。
まさか、ご主人(‘_’?)
なかなか読み応えがあって面白かったです。
長編で面白い作品に怖い話の醍醐味を感じました。
これからも頑張ってください。
(゜レ゜)。
レーサーが宝船を見てはいけないという話があったと思う(゜レ゜)。
東北こういう話多いね(;_;)。
( ゚д゚)。
お読みいただき、コメントを下さった3名様、ありがとうございます。作者の青空里歩です。
順を追って、返信いたします。
・確かに、衝撃的なラストです。ご主人の後悔たるや並大抵のものではないでしょうね。
・初回投稿作『優良物件の裏側』をお読みくださった方でしょうか。もったいないほどの励ましの言葉ありがとうございました。これからも、ご期待に添えるよう頑張ります。基本、長編が多くなりますが、短編、中編にもチャレンジしていきたいです。どうぞよろしくお願いします。
・レーサーが宝船を見てはいけない。そんなジンクスがあったなんて初耳です。グーグルで検索してみたのですが、深夜番組で放送されたそうですね。実際に、現役カーレーサーで、見た人がいらっしゃるのでしょうか。
東北は、別名「みちのく」ともいわれています。(漢字では、「未知の奥」と書くらしいですから)怖くて不思議な伝承怪談の宝庫。まだまだ、未知の怪談がたくさんありそうですよ。
文章も上手く、構成もしっかりしている傑作。
美しくも妖しい屋形船の姿が目に浮かんでくるようです。
怖話で活躍なさっていた「あんみつ姫」様の作品。一字一句全て同じ。