ハーメルン
投稿者:綿貫 一 (31)
私は、全速力で駆け出して、穴の手前ギリギリのところで、なんとか陸の身体を捕まえました。
危なかった! 危なかった! 危なかった――!
さっきまでの緩んだ気持ちはすべて吹き飛んで、今は冷や汗が全身を包んでいました。
息が切れています。
目じりからは、涙がにじんでいました。
私の目の前で、蓋の外れたマンホールの穴が、獲物を捕らえられず悔しそうに、あいかわらずその黒い口を開けていました。
なんで蓋が開きっぱなしになってるの――?
どうして、うちの陸が――?
なんで――?
どうして――?
混乱する頭の中で、先日、公園で聞いたふたつの事故のことがフラッシュバックしました。
『さっちゃんは道路の側溝で――』
『海斗クンは溜め池で――』
『このぐらいの年の子が、ひとりで行けるんですかね――?』
『不審者が――』
不審者はいませんでした。
でも、こんなに短期間に、同じような年の子供ばかりが危ない目にあっています。
子供がひとりで行くには遠い場所に、まるで誘われるように――。
「ハーメルンの笛吹き男」
不意に私の頭に、童話の登場人物が浮かんできました。
§
§
『むかしむかし、ネズミの被害で困っていたハーメルンの街に、ひとりの男が現れました。
「私なら、皆を困らせるネズミを退治することができます。みごとなしとげたなら褒美をください」と男は言いました。
街の人々は、男にネズミ退治を依頼しました。
男が笛を吹くと、その音色に導かれるかのようにネズミたちは列をなして、彼の後ろを追いかけ始めました。
男は、そのままネズミたちを一匹残らず街の外へと追い出しました。
街は平和になりました。
ところが街の人々は、男に褒美を与えませんでした。
ハラハラドキドキ面白かったです。
読みやすく面白かったです
犯人は誰だろう?
お母さんやお父さん…じゃないしな