くらやみ様
投稿者:綿貫 一 (31)
最悪の気分です。
枕に刺さっていた針は、すぐにゴミ箱に捨てました。
僕は彼女をくらやみ様に捧げてしまいました。
あれだけ僕のことを信じて頼ってくれた彼女を裏切って。
僕のしたことを、他に人間は誰も知ることはできません。
あれは夢の中の出来事なのですから。
罪に問われることもありません。
夢の中の出来事なのですから。
ただ、彼女がどうなってしまったかが気がかりでした。
………
………
重い気分のまま、遅刻すれすれの時間に学校に着きました。
教室のドアを開けると、ひとつの机に人だかりができていました。
皆が集まっているその席は、川野麻衣さんの席でした。
肩を震わせ、泣いている女子もいます。
彼女はもう――、
学校に来ていました。
クラスメイトたちは彼女の周りに集まり、笑いながら彼女に話しかけています。
感激屋の女子が、彼女の退院を喜んで嬉し泣きをしていました。
誰かが彼女の身体を気遣うと、もう平気と、笑って彼女は応えました。
すっかり以前の彼女でした。
ホームルームが始まり、先生が彼女の復帰を喜ぶと、教室はわっとにぎやかになりました。
そんな中、僕だけは自分の席でじっと下を向いていました。
彼女は、夢の中のことを覚えているのでしょうか。
覚えているとしたら、僕のしたことを恨んでいるでしょうか。
くらやみ様に包まれた彼女は、その後どうなったのでしょうか。
疑問と不安が、頭をぐるぐると巡りました。
でも、不意にこんな考えも湧きました。
現に彼女は目覚めて、こうして学校に来られているのです。
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