奇々怪々 お知らせ

呪い・祟り

綿貫 一さんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

くらやみ様
長編 2023/12/21 20:15 12,969view
0

最悪の気分です。

枕に刺さっていた針は、すぐにゴミ箱に捨てました。

僕は彼女をくらやみ様に捧げてしまいました。

あれだけ僕のことを信じて頼ってくれた彼女を裏切って。

僕のしたことを、他に人間は誰も知ることはできません。

あれは夢の中の出来事なのですから。

罪に問われることもありません。

夢の中の出来事なのですから。

ただ、彼女がどうなってしまったかが気がかりでした。

………

………

重い気分のまま、遅刻すれすれの時間に学校に着きました。

教室のドアを開けると、ひとつの机に人だかりができていました。

皆が集まっているその席は、川野麻衣さんの席でした。

肩を震わせ、泣いている女子もいます。

彼女はもう――、

学校に来ていました。

クラスメイトたちは彼女の周りに集まり、笑いながら彼女に話しかけています。

感激屋の女子が、彼女の退院を喜んで嬉し泣きをしていました。

誰かが彼女の身体を気遣うと、もう平気と、笑って彼女は応えました。

すっかり以前の彼女でした。

ホームルームが始まり、先生が彼女の復帰を喜ぶと、教室はわっとにぎやかになりました。

そんな中、僕だけは自分の席でじっと下を向いていました。

彼女は、夢の中のことを覚えているのでしょうか。

覚えているとしたら、僕のしたことを恨んでいるでしょうか。

くらやみ様に包まれた彼女は、その後どうなったのでしょうか。

疑問と不安が、頭をぐるぐると巡りました。

でも、不意にこんな考えも湧きました。

現に彼女は目覚めて、こうして学校に来られているのです。

8/9
コメント(0)

※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。

怖い話の人気キーワード

奇々怪々に投稿された怖い話の中から、特定のキーワードにまつわる怖い話をご覧いただけます。

気になるキーワードを探してお気に入りの怖い話を見つけてみてください。