くらやみ様
投稿者:綿貫 一 (31)
長編
2023/12/21
20:15
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あの行動は、結果としては良かったのです。
それに、例え彼女が夢の中のことを覚えていたとしても、僕が同じ夢を見ていたと認めなければ、それは彼女ひとりが勝手に見た悪夢ということにならないでしょうか。
その夢に、たまたま僕が悪役で出てきただけということになるのではないでしょうか。
そう思うと、少し心が軽くなりました。
そうです。
平気なのです。
所詮は夢の中のことなのですから。
僕は顔を上げて、窓際の席に座る彼女の方を眺めました。
まぶしい日差しが彼女のきれいな顔を照らしています。
彼女の方も、ちょうど僕の方を向いたようです。
目が合いました。
その目は、真っ黒でした。
白目の部分も含めて、全部真っ黒。
ニコリと開いた、その口の中も。
真っ黒。
真っ暗。
くらやみ様。
ああ、そうか。
僕はやはり、許されないことをしたのです。
〈了〉
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