くらやみ様
投稿者:綿貫 一 (31)
長編
2023/12/21
20:15
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――川野麻衣……
――かわのまい……
――カワノマイ……
その声は彼女を呼んでいました。
僕の隣で震える、彼女のことを。
くらやみ様は彼女を求めているのでしょうか。
くらやみ様に捕まったら、一体どうなってしまうのでしょうか。
彼女と一緒にいる僕は、どうなってしまうのでしょうか。
僕らは一体どうすればいいのでしょうか。
彼女が僕の手を強く握ります。
僕は、そんな彼女の手を握り返し、その手を引いてドアの前まで歩いて行きます。
確かめたいことがある、と言って。
震える彼女を無理やり引きずって行きました。
ドアの前まで来ると、扉の向こうにくらやみ様の存在感をより強く感じました。
僕は思い切ってドアを開けました。
ドアの向こうは闇一色でした。
そして、モヤモヤ、モヤモヤとこちらの部屋に闇が溢れてきます。
彼女の名前を呼びながら。
彼女は僕の顔を見ました。
僕は彼女ににこりと微笑みかけ、
その身体を無理やり隣の部屋に押し込みました。
彼女は驚いた顔をし、悲鳴を上げ、それから抵抗しようとしましたが、あっという間に闇が彼女の手足と身体に巻き付き、闇の本体に彼女を引きずり込みました。
彼女の身体が見えなくなった瞬間、悲鳴は聞こえなくなりました。
僕はドアを閉めました。
二度と開けたくないと思いました。
………
………
………
目が覚めると、僕はひどく寝汗をかいていました。
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