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呪い・祟り

綿貫 一さんによる呪い・祟りにまつわる怖い話の投稿です

くらやみ様
長編 2023/12/21 20:15 12,958view
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彼女は僕の方を振り返りもせず、ただ黙って前を向いています。

彼女の視線の先、部屋の壁にはドアがありました。

木製のドアです。

閉じたドアの、その四方から。

黒いモヤモヤしたものが溢れてきていました。

それはガスのように、霧のように、

ドアと壁の、見えないほどの隙間から、

ゆらゆら、モヤモヤと溢れてきているのです。

彼女は、背後の僕に気づけないほど、その黒いモヤモヤに心を奪われていました。

彼女は、それを恐れていました。

とても恐ろしいのに、いえ、とても恐ろしいから、足がすくんでその場から動けないでいるのです。

彼女の足がガクガクと震えています。

僕は彼女の部屋に入り、急いで彼女の手を引きました。

そして、驚く彼女を無理やり引きずり、僕のいた部屋へ連れてきました。

慌ててドアを閉めます。

彼女は状況が分からず、呆然としていました。

でも、落ち着くにつれ、僕が彼女をあのモヤモヤから助け出したのだ、と理解したようでした。

彼女は僕に感謝しました。

ありがとう、と。

本当に怖かったの、と。

僕の手をとって、自分の手で包んで、頬を寄せてそんなことを口にします。

僕はまったく嬉しくなって、それでも少し格好をつけて、

大丈夫だよ、とか言いました。

僕は誇らしくなりました。

好きな女の子に頼られ、認められることが、これほどの快感なのだということを生まれて初めて知りました。

満足感と恍惚感で、僕の視界は真っ白に染まっていきました。

………

………

………

気づくと、自分の部屋のベッドの中にいました。

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