くらやみ様
投稿者:綿貫 一 (31)
長編
2023/12/21
20:15
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頭を乗せていた枕には、昨夜のオマジナイの針が刺さったままになっていました。
いい夢を見られました。
オマジナイの効果でしょうか。
これで今日一日、憂鬱な学校生活にも耐えられる気がします。
……
……
登校し教室に入ると、皆が僕のことをちらりと見て、またそれぞれの友人との会話に戻ります。
教室ではいつもこんな感じです。
用もないのに僕に話しかけてくる奴なんていません。
僕は自分の席に着くと、川野さんの席を見ました。
彼女はまだ来ていないようです。
毎日早めに登校する彼女にしては珍しいな、と思いました。
結局、ホームルームが始まっても彼女は来ませんでした。
先生が、今日は川野さんは病欠です、と皆に伝えました。
学校で彼女の顔を見られないのは残念でしたが、夜になればまた彼女が出てくる夢を見られるのだからいいか、と思い直しました。
どうせ現実では、顔は見れても話しかけることなどできないのですから。
……
……
夜になり、僕は昨夜と同じように、枕に針を刺したまま、オマジナイの言葉を唱えながら目をつぶりました。
――くらやみ様、くらやみ様、
――満たしてください、満たしてください、
――捧げます、捧げます、
――くらやみ様、くらやみ様、
……
……
……
目を開けると、真っ白な部屋の中にいました。
壁も、床も、天井も、一面真っ白な、壁に木製のドアだけがある、あの部屋です。
ドアの前には、川野さんがいました。
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