狐の窓
投稿者:綿貫 一 (31)
そして、下駄箱から靴を取り出して、代わりに上履きを脱いで突っ込むと、靴を片手に持ったまま、靴下のまま校内へとUターンしました。
これは、先生たちに、わたしたちは下校したと思わせるための、マホちゃんの作戦です。
クラスの男子たちは、彼女のこういういたずらっ子な一面を知らなすぎなのです。
さて、わたしたちはまず、三階の空き教室に行きました。
普段は使われておらず、古い机や椅子なんかがまとめて置かれています。
ここでは昔(まだ教室として使われていた頃)、クラスでいじめられていた男の子が、自殺をしてしまったんだそうです。
以来、授業中、先生がふと教室の後ろを見ると、悲しげな顔をした男の子が、ぼうっと立っているのを見るようになったんだとか。
幽霊が出るから教室としては使わずに、物置にしているってことみたいです。
その話が本当かはわかりませんが、カーテンのひかれた室内は薄暗くて、ただもう不気味でした。
「さっそくやってみよっか!」
マホちゃんはさっさと指を組むと、わたしにもそうするようにプレッシャーをかけてきました。
わたしはしぶしぶ狐の窓をつくります。
「じゃあ、1、2の、3、で一緒に覗くよ?
1、
2の、
3!」
わたしは思いきって、指の隙間を覗きこみました。
そこに見えたのは――。
教室の後ろ側に寄せて並べられた、机と椅子。
古いプリントが貼られた壁。
閉められたカーテン。
それに、わたしの隣で、狐の窓を覗いているマホちゃん。
さっきまでと同じ、薄暗い教室内の風景です。
特別、変わったものは見えません。
「あれ~?」
マホちゃんも、くるくる回ってあちこちを覗きながら、変な声を出しています。
「なにか見えた?」わたしがきくと、「なんにも~」と、へこんだ声が返ってきました。
まあ、おまじないなんてこんなものです。
これまでも、ごくたまにちょっと不思議に感じることは起こりましたが、ほとんどの場合、何も起こらなかったんですから。
わたしは、少しほっとしました。
予想外の展開でゾッとしました…(;´Д`)
面白かった
うわぁ。
まさかの展開。
でも、現実は、案外こんなものかも知れませんね。
狐の窓のおまじないが役に立って結果的に良かった。
予想外の怖さがありました( ̄□||||!!
おまじないに興じるマホちゃんも実は大人をしっかり観察して可能な限り合理的な判断を下せるとても賢い子だったんですね。バッドエンドじゃなくて良かった。