狐の窓
投稿者:綿貫 一 (31)
次に、閉じていた指を開くでしょう?
最後に、今伸ばした中指と薬指を、反対の手の親指で押さえたら完成!
ね、真ん中に窓ができたでしょう?」
言われた通りにすると、組んだ指と指の間に、小さな隙間ができました。これがきっと「窓」なのでしょう。
これを覗くと、普通では見ることのできないものが見える。果たして本当でしょうか?
私はなんとなくこわくて、それを覗くことができませんでした。
「じゃあこれから、学校の七不思議の場所を回って、この狐の窓で覗いてみよー!」
おっかながるわたしをよそに、マホちゃんは明るい声で言いました。
冗談じゃありません。
教室の時計の針は午後4時を指し、秋の日は徐々に暮れかかっています。
学校が夕闇に包まれていくなか、マホちゃんとふたり、七不思議が眠る場所を回る?
そして、狐の窓でそんな場所を覗くですって?
まったく、とんでもないことを言い出すマホちゃんです。
マホちゃんは、とてもかわいらしい女の子です。
大きくてパッチリした目。小さな鼻と口。肌は白くて、肩までかかるストレートヘアーも、よく似合っています。
教室だと、それほどしゃべる子じゃありません。休み時間も自分の席や図書室で、静かに本(それはたいてい、おまじないに関するものですが)を読んでいます。
見た目や雰囲気から、クラスの男子たちは、マホちゃんのことを、憧れつつも近づきずらいお嬢様みたいに考えています。
ですが女子たちは、マホちゃんが、おまじないのことになるとすごくおしゃべりで、とんでもなく行動的になる、ということを知っています。
そして、言い出したら聞かない、頑固な一面があるということも。
その時もマホちゃんは、普段は見せない強引さで、わたしの手を引っ張りながら、勢いよく教室の外へ駆け出すのでした。
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わたしとマホちゃんは、日直の日誌を先生に提出するため、いったん職員室に寄りました。
「なんだ、ふたりとも、まだ残ってたのか?
もう暗くなるから、早く帰りなさい」
担任の瀬川先生が、日誌を受け取りながら言いました。
瀬川先生は若い男の先生で、イケメンだし、優しくて面白いし、おまけにバスケも上手いから、生徒たち(特に女子たち)から、とても人気があります。
そのときも、わたしとマホちゃんに、他の先生たちから見えないように、こっそり飴を渡してくれました
(「遅くまで、日直ご苦労さん」ですって。こういうさりげないところがモテるのです)
わたしたちは、「先生さようなら!」と元気に挨拶して職員室を出ると、わざとバタバタ足音を立てて、昇降口のところまで行きました。
予想外の展開でゾッとしました…(;´Д`)
面白かった
うわぁ。
まさかの展開。
でも、現実は、案外こんなものかも知れませんね。
狐の窓のおまじないが役に立って結果的に良かった。
予想外の怖さがありました( ̄□||||!!
おまじないに興じるマホちゃんも実は大人をしっかり観察して可能な限り合理的な判断を下せるとても賢い子だったんですね。バッドエンドじゃなくて良かった。