狐の窓
投稿者:綿貫 一 (31)
みなさんは、「狐の窓」というおまじないを知っていますか?
両手の指を決められた形に組んで、その隙間から覗くと、普通は見ることのできないものが見える、というものです。
普通は見ることのできないもの。
それは、死んだ人の幽霊とか、生きている人のオーラ(?)だとか、そんなものです。
私はそれを、おまじないに詳しい、同じクラスのマホちゃんに教えてもらいました。
マホちゃんは、色々なおまじないを知っています。
好きな男の子と両想いになるおまじない。
きらいな子の成績が悪くなるおまじない。
指を置いたコインがひとりでに動いて、紙の上に書かれた文字を指し示しながら、こちらがきいた質問になんでも答えてくれるおまじない、なんていうのもありました。
マホちゃんは、本やネットで次々に新しいおまじないの知識を仕入れては、わたしたちクラスの女子に教えてくれるのです。
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ある日の放課後のことです。
マホちゃんが私の席にやってきて、「新しいおまじないを覚えたから、これから一緒にやってみようよ」と、声をかけてきました。
わたしが日直の日誌を書くのに集中しているうちに、いつの間にか教室には、わたしとマホちゃんのふたりだけになっていたのです。
(しまった、うっかり逃げ遅れた)
わたしは、胸の中でそっと、ため息をつきました。
マホちゃんは、新しいおまじないを覚えると、それを誰かと一緒に試してみるまで、おさまりがつかなくなってしまうという、悪いクセがあるのです。
そりゃあ、「カッコいい男の子から告白されるようになるおまじない」とか、「おこづかいがアップするおまじない」とかなら、全然オーケーです。
でも、「スマホでおばけの声を聞くおまじない」とか、「夢の中に悪魔が出てくるおまじない」なんて、誰も試したくなんてありませんから。
でも、クラスの女子たちは、誰ひとりマホちゃんに強くは出られないのです。
なぜってマホちゃんは、その気になれば、わたしたちをこわい目にあわせるおまじないを、たくさん知っているんですからね。
そんなわけで、その時のわたしも、表面上は興味津々というフリをして(内心は嫌々)、マホちゃんの実験につきあう羽目になったのでした。
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「いい? 指の組み方だけど、一緒にやってみるから、よく見ててね。
まず最初に、両手とも狐の形にするの。
中指、薬指、親指をくっつけて、コンコン。そう、その形ね。
そしたら次に、左手を外側、右手を手前側に向けて、両手を組みます。
そうそう、人差し指と、反対の手の小指を絡めるの。
予想外の展開でゾッとしました…(;´Д`)
面白かった
うわぁ。
まさかの展開。
でも、現実は、案外こんなものかも知れませんね。
狐の窓のおまじないが役に立って結果的に良かった。
予想外の怖さがありました( ̄□||||!!
おまじないに興じるマホちゃんも実は大人をしっかり観察して可能な限り合理的な判断を下せるとても賢い子だったんですね。バッドエンドじゃなくて良かった。