ドリームボックス 2.0
投稿者:kana (217)
「あれほど、警視庁からの応援を待てと言っていたのに、犯人を追い詰め、暴発させた責任をどう取るつもりかね!! 警官が4人も殉職しとるんだぞ!!我々は犯人を足止めだけしていればよかったものを!!」
「ですが署長、我々の管轄でのヤマをむざむざ本庁のやつらなんぞに・・・」
「ですがもへったくれもあるか!! 隊長・・・この件が片付いたら、キミの処遇については覚悟しておいてもらうよ。いいね・・・」そう言って通話は切れた。
隊長は思い出していた。出動前に確かに署長から話があった。
「警視庁ではあの黒い犬に対して特捜班を組織して追っている」・・・と。
警察組織という所はおもしろい組織で、法に基づき、科学に則り、原理原則、理論と証拠を積み上げて犯罪者を追及していく組織であるため、そこにオカルトという要素は微塵も入る余地が無いと思われがちだ。だが、実は上層部になればなるほど、オカルトを完全に否定する人間は少ない。現場でも経験を積めば積むほど、心霊的なものが関わっていることを肌身で感じるようになる。
今回の黒い犬事件に関しては、最初に黒い犬を輸入したブリーダーが3人を殺し、逮捕されたときの供述を「嘘偽り」と否定するのではなく、「すべて本当の事」と仮定し、黒い犬を捜索する「特捜班」が極秘裏に警視庁内で編成された。
彼らは黒い犬の輸入先がアフリカの某国であることを調べ上げ、悪魔的儀式のことや、その対処法なども現地警察から情報を仕入れ、学んでいた。その「特捜班」が現場に到着するまでの間、時間稼ぎをするのが隊長の役目のはずだった。
「オレの責任・・・オレの責任だ・・・オレの・・・責任の取り方ってもんを見せてやる!!」
そう言ってバリケードを越え単身倉庫内に入って行った。
「た、隊長!!危険です!!戻ってください!!」叫ぶ隊員たちの声はまったく届かなかった。
「ギィィィ」と重い鉄扉を開け隊長が踏み込む。
「オイ!!犬っコロ!いるんだろ? 出て来いよ!!おまえのせいでこっちは大変なんだよ!人間は法律で守られてるから簡単には射殺できんが、おまえら犬っコロの命なんぞどうなっても構わんからな、ブチ殺してくれるわ!!ハハっ!!出て来い犬畜生がっ!!」
クーシーが敵意をむき出しにして吠える。
「そこか!!」ダン!ダン!ダン!と隊長が鳴き声のする方向に向かって3発撃ち込んだ。
が、全弾フォークリフトなどにはじかれる。
男が拳銃で反撃する。
ダン!ダン!ダン!とこちらも3発を撃つが、隊長には当たらず、隊長の後ろに積まれていた大きなポリ容器に穴をあけた。そこから勢いよく液体が噴出し、隊長の頭から全身にかかってずぶぬれになってしまった。
「くっそ~~なめやがって!!」ダン!ダン!とさらに撃つ隊長。だが、拳銃はカチカチとむなしい音をさせる。装弾数5発を使い切ってしまった。
「アチっ・・・イち・・・なんだ?」隊長は異変を感じていた。体中にピリピリと痛みが走る。熱を感じる。見ると体中から煙が立ち上っているようだった。痛みがどんどん強くなる。やがて針で刺しているかのような痛み・・・まるで体中を1000本の針で刺されているかのような痛みが走る・・・たまらず床に転げまわりだす隊長。
「イタイ!イタイ!イタイ!イタイ!イタイ!イタイ!!」倉庫外へ逃げ出す隊長。
外で待機していた隊員は、恐ろしいものを目撃した。隊長だ。
隊長の髪の毛は染めたように赤茶色になり、ズルリと抜け落ちた。肌は白やピンクになって腫れあがり、ところどころ赤黒く出血しながらそれがブクブクと泡になっていた。煙も出ている。
「状況!!化学薬品漏出、有毒ガス発生の疑い!!」隊員たちがさらに後退する。
隊長が浴びた液体は高濃度の過酸化水素であった。韓国へ運び込むための薬剤が一時的にここに保管されていたのだが、それを全身に浴びてしまった。隊長は重度の化学熱傷とガスを吸い込んだ中毒症状に陥ってその場に倒れた。
「容疑者に告ぐ! 武器を捨て、すぐに出て来なさい!!倉庫内は現在有毒ガスが発生している!!キミの安全も保障できない!!速やかに出てきなさい!!」
警官隊の説得がつづく。
(ゴホッゴホッ、オェェ)男はややガスを吸い込んでしまい、喉や目に痛みを感じ始めていた。
「うぅ、息苦しい・・・クーシー大丈夫か?」平気そうな顔のクーシー。
kamaです。以前書いた犬のお話、ドリームボックスの続編を書かせていただきました。
前作は割と人気作品のようで、多くの朗読者様にも読んでいただきました。感謝です。
そのまま終了してもよかったのですが、韓国でも朗読され人気になったようで、
別作品の「母の生まれた謎の集落」を書いたときにコメント欄で韓国のお話みたいと言われたのが
ヒントとなり、一度韓国がらみの作品を書いても良いかなと思い、この呪われたブラックドッグを
韓国に渡らせることにしました。・・・と言いたいところなのですが、本編ではご覧の通りとなりました。ボクはこのつづき「ドリームボックス3.0」は書くつもりはありませんのでこれで終わりにしたいと思いますが・・・どうなんですかね。韓国と言えば橋が折れたりビルが倒壊したり、金融危機に陥ったり・・・もしかして、もうブラックドッグたちはとっくに渡っているのかもしれないですね・・・。
わたしとしては、呪われたブラックドッグがライフルで狙撃され良かったと思ったのに、お腹に赤ちゃんを宿しながら・・・続きがあると思いきや、なんと3.0が無いとはとても残念。
しかしながら、面白かったです。
↑コメントありがとうございます。
まぁ3.0のお話は韓国が舞台になるでしょうからね。ボクは韓国は行ったこともなければなんの知見もありませんので、リアルにお話を書いていくことができませんし。
まぁでも、3.0希望の声が多数寄せられたら、乗せられやすいタチなので韓国取材はじめちゃうかもしれませんけど~。・・・でもまぁとりあえずこの辺にしときます。
・・・続き書きたい人に書かせてあげるって手もあるかなぁ・・・