ドリームボックス 2.0
投稿者:kana (217)
「あぁ、そういえばドリームボックスを生き延びたんだったな、お前」
クーシーにとっては3度目の有毒ガスだ。
「ここが年貢の納め時ってことか・・・」そう言うと男は立ち上がった。
「クーシー・・・オレはココイラがもう限界のようだ。いいか?埠頭の先に韓国行のフェリーが停ってる。白い船だ。とにかく走って逃げて、アレに乗り込め!・・・そしてそのまま世界のどこへでも逃げ延びろ!!」
男はガスを吸わないように息を留めながら、クーシーと共に走って倉庫を出た。
緊張する包囲網。
「今だ、行け!!」クーシーをフェリーに向かって走らせる男。そして拳銃を警官隊に向ける。
「クーシーも、人間のエゴが産んだ犠牲者なんだ!! 見逃してやってくれ!!」
そう叫んで、警官隊に向けて拳銃を撃った。
あえて自分に注意を向けさせることで、クーシーに逃げる隙を与えたのだ。
それに対し警官隊は一斉に反撃をした。男は何発もの銃弾を浴び、踊るようにして倒れた。
男が撃った弾丸は空を切り、どこか海の方へ飛んで行った。
それが最後の弾であり、男の手に残った銃の弾倉にはカラ薬莢しか残っていなかった。
クーシーは後ろを振り返らず、フェリーへとまっすぐ走っていた。
だが、突如として響き渡る雷鳴のような銃声。クーシーは後ろ足のモモのあたりを撃たれた。
「きゃあぁぁんきゃぁああん」
クーシーの泣き叫ぶ声がこだまする。はじめて銃撃を受けたクーシーは最初それがなんなのかわからず、何かに咬まれたのかと思い、痛みのあるモモのあたりを探ってその場でグルグルと回転した。動くたびに血が噴出する。やがて立っていられなくなり、横倒しになる。
激しい痛みに耐えきれず、頭を上げて遠吠えをした。
そこにもう1発、先ほどと同じライフル弾だ。
今度は心臓の近くに命中し、激しく血しぶきが飛ぶ。
クーシーは吹き飛ばされるようにして再び倒れた。
警視庁「特捜班」の隊員がやっと臨場し、クーシーをライフルで狙撃したのだ。
事前の情報から、この狙撃には専用弾が使用された。アフリカ・某国で用意された純銀製の十字架を溶かして作られたという特殊弾頭だった。それが効を奏したのか、魔犬と噂された黒い犬は完全に沈黙したようだった。
クーシーは薄れゆく意識の中で、あるものを見ていた。白い犬(ノール)が隠れ込んだあのトラックが、韓国行のフェリーに貨物と一緒に乗り込んでいく所だ。
クーシーは夢を見た。韓国に着いたノールが自由に走り出す姿だ。
・・・お腹にクーシーの子供たちを宿しながら・・・。
kamaです。以前書いた犬のお話、ドリームボックスの続編を書かせていただきました。
前作は割と人気作品のようで、多くの朗読者様にも読んでいただきました。感謝です。
そのまま終了してもよかったのですが、韓国でも朗読され人気になったようで、
別作品の「母の生まれた謎の集落」を書いたときにコメント欄で韓国のお話みたいと言われたのが
ヒントとなり、一度韓国がらみの作品を書いても良いかなと思い、この呪われたブラックドッグを
韓国に渡らせることにしました。・・・と言いたいところなのですが、本編ではご覧の通りとなりました。ボクはこのつづき「ドリームボックス3.0」は書くつもりはありませんのでこれで終わりにしたいと思いますが・・・どうなんですかね。韓国と言えば橋が折れたりビルが倒壊したり、金融危機に陥ったり・・・もしかして、もうブラックドッグたちはとっくに渡っているのかもしれないですね・・・。
わたしとしては、呪われたブラックドッグがライフルで狙撃され良かったと思ったのに、お腹に赤ちゃんを宿しながら・・・続きがあると思いきや、なんと3.0が無いとはとても残念。
しかしながら、面白かったです。
↑コメントありがとうございます。
まぁ3.0のお話は韓国が舞台になるでしょうからね。ボクは韓国は行ったこともなければなんの知見もありませんので、リアルにお話を書いていくことができませんし。
まぁでも、3.0希望の声が多数寄せられたら、乗せられやすいタチなので韓国取材はじめちゃうかもしれませんけど~。・・・でもまぁとりあえずこの辺にしときます。
・・・続き書きたい人に書かせてあげるって手もあるかなぁ・・・