【鬼ぃちゃん事件】-事件記者 朽屋 瑠子-
投稿者:kana (210)
その様子を見ていた九郎は目を丸くして驚いた。そして恐怖におののいて後ずさりした。
「うわぁぁぁぁ!!」気が付くと思わず叫んで逃げだしていた。
光と血煙の中からむっくりと首をもたげたのは、松濤組を壊滅させた悪魔バルベリトが騎乗していたあの「赤い馬」だった。馬用のヨロイを装備し、頭にはユニコーンのような鋭いツノ、前足の蹄にはナイフがあり、前足で蹴って人の首を撥ねることもできる。
熊でもひと蹴りで殺せそうなほどの禍々しい赤い馬が綾辻の方をぞっとするような殺意のこもった目で見ている。
綾辻の背筋が一瞬で凍り付く。すでに猛獣である。テコンドーどころか、人間のどんな技も通用しないのは火を見るより明らかだった。
「きゃあああ」さすがの綾辻も思わず絶叫して後ろを向いて逃げ出す。
それを見た赤い馬はガラガラとヨロイの音をさせながら綾辻の方へ走った。
まるで人を轢き殺そうとする戦車の様だ。
あと5メートル・・・あと4メートル・・・どんどん近づいて行く。
あと3メートル・・・あと2メートル・・・赤い馬はユニコーンのツノを綾辻にまっすぐ向け、突き殺す体勢を取って突進した。朽屋は目をつぶった。この瞬間が勝負だと思っていた。
あと1メートル・・・赤い馬がいよいよ首を伸ばし、綾辻を殺そうと走り寄る。
次の瞬間、「ドンっ」と言う低い音と共に、勢いの良かった赤い馬の突進が止った。
土煙が上がる。
外野でこの空間の情報を計測していた部隊はすべての収集データでインジケーターが振り切れる状態になっているのを確認した。
朽屋はその光景をあっけにとられながら見ていた。
「鬼だ・・・!!」
ユニコーンのツノを脇にはさみ、両腕で赤い馬の頭を押え付けている。
見る見るうちに筋肉が増大していき、馬は一歩も前に進めずにいた。
「うぉぉぉぉ!!」鬼が叫んだと思うと、そのまま馬の首を横に捻り、とうとう赤い馬を地面に倒してしまった。鬼がすかさず次の一撃を馬の頭に加えようと拳を上げる。
「戻れ!デストリア!!」朽屋がそう叫ぶと、赤い馬は光の粒子となり、朽屋の手元へと消えていった。朽屋の手には最初に見た赤い色のカプセルが残った。
一旦振り上げた拳を静かにおろし、ゆっくりと立ち上がる鬼。筋肉量がやや縮小しはじめている。戦闘状態の解除のようだ。
「お・・・お兄ちゃん・・・?」綾辻が、その背中に語り掛ける。
「お兄ちゃんなんでしょ?・・・こっち向いて?・・・」
鬼が肩越しに少し振り返る。鬼の形相の面の奥から、こちらを覗く瞳が見えた気がした。
再び鬼が前を向き直ると、何を思ったのか急に走り出した。
「あっ!!お兄ちゃん!!なんで逃げるの!!」
いったい何をしているのだろう。夜の学校のグラウンドで、逃げる鬼を綾辻が追いかけている。とりあえず朽屋もそれに参加して、鬼の前に立ちはだかって通せんぼしてみた。
「ハイ、鬼ぃさん、ちょっと止まって~。なかなか見事な戦いぶりでしたよ」
鬼は観念したように走るのをやめ、ゆっくりと足を止めた。
「お兄ちゃん!!」その背中に綾辻の大きな声が刺さる。
kamaです。朽屋瑠子シリーズ第12弾は、前回の「赤騎士事件」の流れを汲みながら以前公開した【鬼のいる街】という作品の解決編ともなっています。今回はアクションも多いので、マンガ的に楽しめるのではないかと思います。よろしく~~
瑠子シリーズ大ファンの地方在住者です。赤鬼のお兄さんと妹の香織ちゃん、某アニメを彷彿させるようで感動しました。九郎ちゃん♀と瑠子のバディ、これからも期待しています。
↑kamaです。コメントありがとうございます。いつもありがとうございます。楽しんでいただけたでしょうか。多分この後、組織は綾辻兄妹をスカウトするんじゃないですかね~。またいつか再登場する日も来るかもです。ちなみに、朽屋愛用のマグカップについてですが、実は第一話ですでに登場しております。三連休ヒマだ~という方は、ぜひ朽屋瑠子シリーズ読破してみてください~~~
10/7(土)21:00 渋谷区道玄坂のスクランブル交差点で暴走車が7人を撥ねる事故。
朽屋瑠子で渋谷が舞台というので、なにかあるだろうなとは思っていたが。
何と!死んだはずの赤い馬が調教されカプセルに封印されていたとは。
↑kamaです。そうです。朽屋はこれでケルベロスと赤い馬の2頭を使い魔として使役することになりました。カプセルの描写は、もちろんウルトラセブンのカプセル怪獣のオマージュです。もう何体か欲しいですね。
その事件って本当にあったんですか?違うならKamaさん天才ですね