導かれて

「…誰かいるの…？」

話しかけるも声が壁に反響するだけで返事はない。
ノックしても反応無し。
恐る恐る取手を引くもロックされているのか扉は開かない。

そういえばメモには放課後の16時とあっただけで日付けの指定はなかった。

今日ではなかったのかも…

そう不安になったところでロッカーのノゾミさんの胸あたりの高さに、5ミリ程度の小さな穴が空いているのに気付いた。
穴の下にはマジックで”ココ”と書いてあるのが読めた。

　　　　　　　　　　◯
　　　　　　　　　コ　コ

ーーー君に見せたい物があるの。

メモの言葉を思いだし、身を屈めてゆっくりと赤錆だらけのロッカーの表面に顔を近づけ、片目で穴の中を覗きこむ。

……暗い。
目を凝らしてみる。
やはり真っ暗闇で内部が何も見えない…。

と、その時。
何とも言えない強烈な”嫌な感じ”がした。
何故かは分からない。
第六感が働いたとしか言いようがない。

ノゾミさんはロッカーからパッと顔を離した。

それとほぼ同時に。

ズコン！

穴からマイナスドライバーが突き出ていた。

初めは意味が分からず鈍く輝く目の前のソレを呆然と眺めていたが、数秒置いて理解が追いつき、思い出したように悲鳴を上げた。

その間もドライバーは容赦なく暴れ狂っていた。

魂を凍りつかせ、もつれる脚でトイレから飛び出し、南校舎の職員室へと全力で駆け出した。

しどろもどろになりながらもなんとか教員に事情を説明し、共に現場のトイレへと急行する。

戻った時にはロッカーの扉は開いており、中には数本のデッキブラシがあるだけで既に無人だった。

この事件を受けて学校では全体集会が開かれる事態となった。
更に各クラスで無記名アンケートも実施されたが犯人は見つからずに終わった。