ㅤ父の職場の同僚のおっちゃんから聞いた話。仮に直樹とする。
フェイクを混ぜるので矛盾があったらそういうことで。
ㅤ数十年前、直樹は同僚の孫(仮に誠也とする)に限定のポケモン(おそらく当時予約販売のみで入手可能だったポケットモンスターブルーバージョン)を貸した。
当時そういったゲームソフトの貸し借りはよくあったことのようで、例え限定モノであっても直樹はそこまで頓着しなかったそうだ。
ㅤしかしその誠也はやばかった、と直樹は言う。
何と帰ってきたポケモンのデータは貸した状態ではなく(当時のポケモンはフアイルがひとつのみ)、誠也が『さいしょからㅤはじめる』を選択してプレイしたであろうデータに置き換えられていたのだ。
問い質したところ近々引っ越す佐々木のなんたらに盗まれて雲隠れされたからせめてデータは貸してもらった状態に近付けたとか言っていたが、手持ちのポケモンからして全く違った為碌でもない嘘だろうと直樹は語った。
ㅤ俺はそれを聞いて腹が立った。
勿論誠也にではない、直樹にである。
何故なら、誠也がこのような仕打ちをした理由を俺は知っていたからだ。
ㅤ誠也が「貸して」と直樹に言う数ヶ月前、住んでいる市の大きなホームで歌謡発表会が催された。
その時のトリは誠也の婆ちゃんで、演歌が上手く着物も豪奢なものを着て万全の状況で臨んでいた。
誠也の自慢の婆ちゃんだ。
ㅤしかし、そこに水を差す奴がいた。
直樹とその同僚共である。
最前列に腰掛けていた直樹共は、自分たちはより盛り上げるつもりでと工事写真用の黒板を持ち、いきなり席を立って振り返った。
そこには『○○家の”人妻”』だの、見るに堪えない下衆な内容が書き込まれていたのだ(俺もこの歌謡会に参加していたので覚えている)。
ㅤ当時はまだセクハラだのの問題が今程取り沙汰されていなかった為か不問に処されたようだが、これに誠也が納得いくはずがない。
自慢の婆ちゃんの華舞台は下衆男共に台無しにされ、婆ちゃんはきっと清水の舞台から飛び降りたい気持ちだっただろうと察したのだ。
ㅤ故に誠也は、復讐に移った。
自分が思い付く限りの最も苛つくこと──自分のセーブデータを消され、赤の他人のものにすり替えられるという方法で。
ご丁寧に強いわざマシン(当時は使用回数無限ではなく、わざレコードのように使い捨てで1個限定も多々ある)はすべて自分のポケモンを送り覚えさせて回収、捨てられるどうぐは全て捨て、逃がせるポケモンは全て逃がした上で上書きしてやったそうだ。
ㅤ自身の愚行を棚に上げ、あまつさえ被害者面を決め込み『赤の他人』の俺にベラ回す直樹に俺は心底腹が立ったという訳である。
ㅤ……これを見た所帯持ちの諸氏は、ゆめゆめ気を付けるべきである。
最近の子供の復讐には、あなたたちのプレイしているソーシャルゲームの『石』を全部無駄遣いする方法がしばしば用いられるからだ。勿論顔認証指紋認証程度なら、寝ている内に突破されてしまう。
ㅤネットで何でも簡単に調べられるようになって久しいのだから、子供を舐めてはいけない。
























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