都内を20分ほど走り、クルマは大きな屋敷に入った。
「ふ~ん、この屋敷が本部なの?お金持ちなのね・・・あれ?」
朽屋は屋敷内にただならぬ雰囲気を感じ取っていた。
チンピラの案内で急いで屋敷内に入ると、構成員たちが日本刀や鉄パイプ、そして拳銃等、
各々が武器を持って走り回って大騒ぎである。どうやらすでに修羅場らしい。
「ヤバっ・・・今日下見して、明日本番と思ってたら・・・もうはじまっちゃってる」
「朽屋さん、ご苦労様です。桐原です」そう言って近づいてきたのは、昼間、朽屋の頭に銃口を向けてきたスーツの男だ。
「桐原さん・・・もう修羅場になってるなんて聞いてなかったわよ」
「つい先ほど、異常事態となりまして・・・牢の鉄格子も壊されそうです」
「ちょっと案内してくれる?」
「こちらです」トカレフを出しながら朽屋を案内する桐原。今回はマガジンに全弾入っているようだが、相手は組長の孫。撃つわけにはいかないだろう。
構成員たちが覗き込む地下への入り口に、桐原と朽屋が向かう。階段下から獣が吠えるような声がする。ゆっくりと慎重に階段を降りていくと、鉄扉の前にジャージの少年が陣取っていた。手にはやはりトカレフを握っている。
「九郎、状況は?」桐原がジャージの少年に問う。
九郎は朽屋を見ると軽く会釈し、次に桐原に応えた。
「給仕役は先ほど赤い馬に内臓を食われ、今は鉄格子に磔にされて飾られています」
「見せてください」朽屋は前に出て、鉄扉の小窓のシャッターを開けて中を覗いた。
室内の異常さに目を見張る朽屋。こんなおぞましいシーンはなかなか見たことがない。
室内は二重になっていて、部屋の真ん中に鉄格子で出来た座敷牢がある。そこにベッドが置かれ、上半身裸の男が横たわっていた。いわゆる彼が組長の孫なのだろう。彼の背景には巨大な薔薇の花が咲いており、トゲのある蔓を鉄格子の中で縦横無尽に走らせていた。
異様なのはその鉄格子の外側を、鎧装備の真っ赤な馬が歩き回っていることだ。
その馬が殺したのか、食事などを与える役をしていた給仕係の男性が襲われ、体を裂かれ、
薔薇の蔦に巻き付けられた上半身だけが鉄格子に磔にされていた。床は血まみれである。
その馬が突然ドアの方に向かってきた。朽屋たちに気付いたようだ。
前足の蹄でドアを蹴り上げる。鋼鉄製の頑丈そうなドアがひしゃげる。
このままではドアが蹴破られるのも時間の問題だ。
「ドアから離れて!」朽屋が二人に命じる。
手の平をドアに向けてスペルを唱える。
「ここに結界を張ったわ。しばらくは持つでしょう。私たちは一旦引いて、作戦会議よ」
急いで階段を駆け上がる三人。
「まず、みんな避難よ。いくら武装してても普通の人間じゃ歯が立たないわ」
「朽屋さんはどうするつもりで?」桐原が問う。
kamaです。朽屋瑠子シリーズ第11作目は、対バルベリト戦です。
今回は登場人物も多いですが、個性ある人たちが多いので好きになっていただけたらいいなーと思います。尚、ネタバレですが、文中8pでヤクザの事務所が「渋谷区ショウトウ3ノ2ノ5」となっていますが、これはもちろん架空の住所で、知ってる人は知っていると思うのですが、1992年に公開されたウッチャンナンチャンの主演映画「七人のオタク-カルトセブン-」で、主人公の南原さんが無線オタクをつかまえるための罠として流し続けた謎の暗号「・・渋谷区ショウトウ3ノ2ノ5・・渋谷区ショウトウ3ノ2ノ5・・」というのが元となっております。今回のお話では渋谷区を舞台にしたかったためです。ラストも朽屋がキルビルやってる姿を想像しなから読まれると、楽しさ倍増かと思います。ロマンホラーということで、お楽しみください。
面白かったです。一気に読みました。
今回も面白かったです
このサイトの他の作者の作品も、朽屋瑠子にかかれば全てハッピーエンドになるのに!
↑kamaです。コメントありがとうございます。19ページもあるのに一気読みしていただいてありがとうございます。感謝!!
個人的に朽屋瑠子シリーズをおもしろいと言ってもらえるのが一番うれしいです。自分で読んでて一番おもしろい作品ですからw
今朝も会社に行く前に「どこか間違いはないかな~と読んでたら、途中からおもしろくなってきて止まらなくなり、あやうく遅刻するとこでした。フ~アブナイ~~
瑠子シリーズ今回もドキドキしながらも楽しく読ませて戴きました。九郎ちゃんと瑠子のバディ、今後が楽しみです。
読んでいるうちに目が冴えてしまい寝不足です。
今回のも面白かったですよ。
でも、組長が死ぬなんて😭
気になるのは九郎が朽屋の体を拭いてるときに赤ちゃんみたいって笑うとこがあるんですが、えっ、朽屋の体にベビーなところがあるってことですか?!
↑kamaです。コメントありがとうございます。
ドキドキしながらみていただいて、本当に感謝です。
寝不足にして、スイマセン!楽しんでいただければ本望です。
朽屋の裸で赤ちゃんみたいなところ・・・たぶん、肌ですかね?わかりませんが。
・・・組長と桐原が死ぬのは、実は僕も葛藤がありました。なにも殺さなくてもいいんじゃないかと。逆にここでニンニンを死なせてしまおうかなとも思っていました。
でも、ニンニンが死ぬと呼び出した朽屋の責任問題にも発展しそうだし、明るく終われない気がしたのでニンニンは生かしました。組長と桐原さんももったいなかったですが、彼らはやはりヤクザですから、極道には極道の道があります。死んで花実が咲くというか。実際彼らは作品内で人殺しをしたと語っていますから、作品を読んだ人の中には人を殺したやつがなぜ生きながらえているのかと反社に対して嫌悪感を抱く方もいると思います。だからこのような結末が似合いだったのかな、と思います。問題は九郎ですね。彼(彼女)は本編内で5人殺してると言ってます。なのに最後は明るく朽屋と仲間になりそうな雰囲気ですが・・・果たして殺人を犯しているキャラが普通に受け入れられるのか・・・というのは非常に難しい部分もあると思います。ボクの作品の作り方からすると・・・九郎も組長と同じようにどこかで死ぬ運命にあるのか・・・あるいはこの呪縛を説くために、九郎は実は殺しなんかやってなかったという設定を用意するか? 子供時代からの洗脳で心神喪失状態だった?
さてどうなるでしょうか。本文内では自分の死をいとわない行動が目に付く九郎ですから、これから先も死線に最も近いキャラとして登場していくかもしれないですねぇ。・・・先の事は判りませんね。