フランス人形の館

特に心霊現象が起きるわけでもなく、あああああああああああああああああああああああああ

高校時代、原付でしょっちゅう心霊スポットに行ってた。
近場で有名なトンネルだとか廃墟だとか、うわさに聞く場所は大体行った。

霊感ゼロの俺たちは特に心霊現象なんて体験することも無く、
みんな彼女や友達に自慢するためだけに行ってた。度胸試しって感じでね。

近場は行きつくしてしまって、唯一行ってない場所は暴走族のたまり場だし、
悩んだ俺たち遠くの心霊スポットに目を付けた。

原付で約2時間、山奥のド田舎に廃墟があるんだと。

そこは温泉地なんだけど、どうにも似つかない洋風な廃墟なんだって。

窓から人がのぞいてたとか、フランス人形みたいなものが大量に置いてあるとか、
侵入した人の気が狂ったとか、まあありきたりな話があった。

クラス内にある程度そのうわさ話を流した後、「んじゃ俺ら行ってくるわ！ｗ」とか言って、
「よく行くな～すごいわ～」みたいなクラスメイトの尊敬の眼差しを受け、
浮かれ気味に廃墟に向かった。

21時頃、友人3人とともに出発した。

不良で暴走族にも所属している熱血漢のA。
インドア派でゲーム好き、いつもイヤイヤ心スポ巡りに参加するB。
特に特徴のないC。

親父が経営する中華料理屋の出前用バイクを勝手に拝借する俺。

たまたまバイク持ってたっていうだけでつるむようになった4人だ。

休憩挟みながら、2時間30分かけてようやく現場に到着した。
夏だったが、山奥だからか異様に寒かったのを覚えてる。

うわさ通り、温泉地には到底似合わない洋風な建物だった。
ひと昔前の金持ちが、別荘でも建てたのが廃墟になってんのかな。

真っ白な壁にはツタが生い茂っていて、「〇〇参上！！！」とか、
「電話くれたらヌキます♡ 090～」なんてラクガキが施されてた。

けっこう人来てるってことは大したことないんじゃね～なんておどけて見せたが、
建物の中から漂う異様な雰囲気はどうも嫌な感じだった。

玄関のドアは引くと、鍵は開いていた。埃がぶわっと舞う。