夏休みに田舎であったこと(加筆修正版) ※「愛なき子」前日譚
投稿者:kana (210)
「あれ?ユウキの写真もあるよ・・・」と振り返ると、そこには・・・
「うわぁぁぁぁぁぁーーー!!」
そこには、真っ青なしわがれたような顔に、真っ黒にくぼんだ穴だけの眼をしたユウキが頭を掻きむしりながら立っていました。
しばらくして、ボクは両親や叔父さん、叔母さん、イズル兄ちゃんに囲まれて抱きかかえられていました。どうやら一瞬気を失っていたらしいのです。
「ユウキがぁ! ユウキがぁ!」
ボクはそう叫んで暴れていたと後から聞かされました。
その時のことはちょっと記憶が飛んでしまっていて曖昧なのです。
父の話では、ユウキは去年の夏におじいちゃんと一緒に渓流釣りに出かけ、そこで足を滑らせて川に落ちてしまい、溺れて亡くなっていたそうです。
おじいちゃんもその時にユウキを助けようとして一緒に亡くなっていました。
「おまえ去年の事、覚えてないのか?その時北海道に来たのだって、おじいちゃんとユウキちゃんのお葬式のためだろ?」
そう父に言われても自分としてはピンと来ませんでした。
確かにおじいちゃんの葬式には出た記憶があるけれど、その時だってユウキはボクの横にいつもいて、お寺の中でずっと一緒に遊んだりしていたのです。幼いボクには葬式なんてつまらなくて興味もなくて、長い廊下を走り回ったり、たくさんの座布団の山の中に潜ったり・・・只々ユウキと一緒に遊んでいたのです。
「だって、お父さん! 今日だってボク、ユウキとプールに行って遊んだのに!」
「何言ってるんだ、プールに行ったのはおまえとイズルちゃんだろ?おまえが急にプールに行くっていうから、わざわざついて行ってもらったんだぞ?」
「そんな・・・そんなことって・・・」
イズル兄ちゃんはコクっとうなずいて、そのままだまって仏壇の写真を眺めていました。
泣き止まないボクは母親に連れられて強制的に寝かしつけられることになりました。
・・・翌日、ボクらはおばあちゃんの入院している病院へお見舞いに行きました。
その時にはもうユウキの姿は見当たりませんでした。
・・・でも、どこかからユウキが覗いているような気配が・・・。
病室でおばあちゃんに会えた時、ボクは泣きながら抱き着いていました。
前よりずっと痩せたおばあちゃん。
ボクはおばあちゃんに昨日の出来事を話しました。
「この子ったら、きっと長旅で疲れちゃったんですよ」と
母がおばあちゃんに詫びを入れました。
「ユウキもね、きっとタカシちゃんが来てくれたんでうれしくて出てきちゃったのかもねぇ・・・」
そう言ってくれたお婆ちゃんにボクは訴えました。
「違う、違うよ、ユウキはもしかしたらボクを・・・!」
殺そうとしているのかもしれない、と、言いたいところで母がボクの頭を押さえてきて、それ以上しゃべらないようにしてきました。
kamaです。夏が来るまで温めておきました。「夏休みに田舎であったこと」の加筆修正版です。
こちらのお話は以前ボクが書いて大変好評をいただきました「愛なき子」というお話の前日譚とんなります。そう、こっちの話の方が先なのです。愛なき子はこのお話の主人公が社会人になってからのお話です。
・・・ではなぜこちらを後にしたかというと、おばあちゃんがこのお話で亡くなってしまうので、愛なき子より先に公開するとネタバレになってしまうからですね。
ぜひ、今作を読んだ後で、また愛なき子も読んで見てください。
世界観が広がってより楽しめるかと思います。
夏の雰囲気っていいよね。
夏はジュブナイルな感じがいいよね。
愛なき子も今回のお話もとても良かったです。
↑kamaです。コメントありがとうございます。怪談も、夏の思い出になるといいですよね。