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白と黒の旅人さんによるにまつわる怖い話の投稿です

百足というより百手(ムカデ)
短編 2023/06/12 23:38 2,698view
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蛇が鎌首をもたげるように、身体の半分を持ち上げて前かがみにソイツを睨むムカデの「足」は途中まで普通のムカデの足なのだが、頭のすぐ後ろの足だけ、カマキリやタガメの手というか、そういう他の足とは違う長さ、形状をしており、その先には正しく「ムカデ」と言った顔がある。

次の瞬間、ムカデはズルリと前に動き私と同じく上を見上げるソイツをワシャワシャ動く足で突き刺した。叫ぶソイツをよそにムカデは顎で噛みつき、足をさらに突き刺す。そして足をいっせいに曲げたと思うとソイツをブチリと引きちぎった。

引きちぎられたソイツからはGブリのような毛に覆われた虫のような足がボトリと落ちた。

落ちた足をすくい上げるように食べると、ムカデは満足したように踵を返し、私の上を通過した。

そこで目が覚めた。

生々しい肉がちぎれる音を思い出し、あまり汗をかかない私が汗びっしょりで目覚めると時刻は朝の4時半頃。

ペットショップで買った餌用Gブリは共食いでもしたのか、全てバラバラになって死んでいた。

朝の日差しが入らない少し湿気を感じる天気の中、家の門の外を見たが、何も痕跡らしい痕跡はなかった。

その日、仕事から帰ったあと、ムカデの捕食の動画を調べてみた。

普通、ムカデは視力が弱いので触角に触れた物に毒牙で噛みつく。そして抑え込むように身体を縮めたりするのだ。

明らかに夢で見た捕食の仕方とは違う。
あまりにも凄惨な、痛めつけるような食べ方にかなり恐怖した。

今でもこのムカデの正体は詳しくわかっていない。家にとり憑く霊たちや私自身に害がないことだけは分かるのだが、それにしても何か見返りを求められたりしないのだろうか。
それとも、Gブリを用意したこと、私が警棒のようなもので門の前にいたヤツをぶん殴ったことがトリガーのようになって行動したのだろうか。

過去に機械のムカデのような守護霊がいるという話を聞いた。その方の守護霊も凄惨なやり方で守護対象を霊から守っていたというのも調べて知った。
私のムカデもそういう類なのだろうか。

唯一可愛げがあるとしたら門の前にいたやつを食べたあと、1番長い足で人間が爪楊枝で歯に挟まった食べカスを取るような動きをしていたことだ。

そこそこ最近、2022年の後半、雨が少し続いた頃のお話です。

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