無名の山
投稿者:Nilgiri (3)
「おーい、Bでてこーい。キャンプ場に行くぞー。どうせガールとかいっても、この辺は雌ざるくらいしかいないんだから、観念して出てこーい。」
とりあえず、周辺に雑に声掛けしつつ俺たちはハイキングコースを戻ることにした。どうせ1本道だから、Bがわざわざ森の中に入っていない限りどこかで合流できるだろうと思ったからだ。先に降りて、キャンプ場のトイレに行っているということも考えられたし。特に緊張感のないままコースを下っていくと、行きよりも早くハイキングコースの入口が見えてきた。
その瞬間俺たちは全身が粟立ち、心臓の鼓動が一気に早くなるのを感じた。
そう、“もう、入口が見えている”のだ。まだ、東屋を通っていないのにも関わらず。
「東屋はどこだ?」
おかしい。戻り道のどこにも東屋があるような開けた場所はなかった。けれど道は1本道で、一か所の分岐点もない。行って戻るだけの単純なハイキングコース。道を間違う余地はないのだ。
「東屋なかったよな?」
「通ってない。確かにあったはずなのに。」
「どこにいったんだ?」
3人そろって、この異常な奇妙さに耐えきれず同じ言葉ばかり繰り返してしまう。道の後方を見ても前方をみても、それらしい建物は1つもない。
「来るときは、確かに東屋があった。」
「でも、この道狭くて開けた場所が全然ないぞ。他にも道があったのか?」
「そうだ、お前デジカメで撮ってただろ?」
Cにせかされて、デジカメを確認すると、そこにはさらに異様な光景が映っていた。
11:26:02AM
なんでもない道の途中で、立ち止まる俺たち。
“最近作ったのかな?”
“こんなところに、わざわざ小屋を作るなんて税金の無駄だな・・・”
何もない空を眺めながら、映像の中の4人は空中椅子に座る。
まるで、全員で劇でも行っているかのように、何もない場所であれこれ言い合っている。異常すぎる映像に耐え切れず俺はデジカメの電源を切った。
「なんだこれ。」
3人ともそれ以上言葉が出てこなかった。
「そうだ、Bは?Bはどこに行った?」
あまりにおかしいことが起こっていて、俺たちはすでにパニック状態だった。そして、恐ろしいことにBがどこにもいない。一度ハイキングコースを出た俺たちは、狂ったようにBを探し回った。キャンプ場・駐車場・トイレ、どこにもいない。戻るのは怖かったが、ハイキングコースを3人で駆け上って探した。どこを探しても、Bはどこにもいなかった。
ともかく一度ハイキングコースの入口に戻った。
「Bのやつどこに行ったんだよ。」
「まさか、森の中に入ったとか?」
「あいつが携帯持ってたら、すぐに連絡が取れたのに。」
「親が許可してくれないんだっけ?Bの親厳しいらしいからな。」
俺とCが話し合っているとAがふと、俺たちの荷物を置いているところに目を向けてはっとしたように言った。
読み応えありました。
おもしろかったよ。
B君は家出じゃないね。
突然行方不明になり、事故、事件関係ない場合は違う世界に行ってしまったのかもしれない。
背景が目に浮かび、釘付けになりながら読ませて頂きました。
後味まで含めて、とても不可解で不思議な話でした。
変な因縁話がないのがとてもリアルで読みふけってしまいました。
面白かったです!
b君は結局家出なのか、遭難なのか、考えさせられますが、リアルに有り得る話で楽しく読ませて頂きました。恐さよりも不可解でしたね。
面白かったです。
Aは性格上、この異常すぎる事件に関わるのはヤバいと思って割り切ったのか
本当はあの祠の事について知っててBの行方も知ってたのか
それとも超常的な何かに取り憑かれて警告したのか。
何れにせよ真面目とされてたAがあんなふうに友達に対して冷淡になったのは興味深いですね。