サトルの気持ちとは裏腹に、女(サトル)はテーブルの端に置いてあるロープを右手に持つ。
ロープの片方には30㎝くらいの直径の輪っかが作ってあった。
そしてゆっくりと後ろの和室に向かって歩き出した。
その時チラリと視界に入った和室の奥にある鏡台に映った姿は、白いブラウスに紺のスカートをはいた色白の美しい若い女だった。
―え!?何で、あんな女が映ってるんだ?
混乱するサトルをよそに女(サトル)は畳に置いた椅子に乗ると、襖の上にある鴨居にロープを通し、しっかりと結んだ。
そして輪っかの中に細い首を通す
―え!嘘だろう!?
は、早まるな!
止めてくれ!
そんな彼の必死の願望とは全く関係なく女(サトル)の両足は、ふっと台を離れた。
次の瞬間、サトルは喉元にちぎれるような鋭い痛みと猛烈な息苦しさを感じた。
―た、たす……け……
その悶絶するような苦しみは数分間続き、やがて彼の頭の中は真っ白になった。
……
暗闇の中からさっきの行進曲が聞こえてきている。
サトルは目覚めると、ひどく咳き込んだ。
股ぐらが冷たい。
どうやら失禁しているようだ。
ヘルメットからピエロの声が聞こえる。
「いかがでしたか?
楽しんでいただけましたかしら?」
「何言ってんだ、ふざけるな!
俺はもう帰るから、この手錠を外してくれ!」
「それは出来ません」
ピエロはきっぱりと言った。
「なんだと、ふざけるな!
何の、何の権利があって、こんなことをするんだ!」
「だって、あなた言ったでしょう、何回も死にたいと。
だから望みを叶えてあげてるんですのよ」
嫌な事ばかり続くと、やっぱりへこむ。
怖い
死を体験できる映画館みたい。
使い方によっては自殺防止の教材になりそう