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ヒトコワ

ねこじろうさんによるヒトコワにまつわる怖い話の投稿です

深夜のテレビショッピング【カニバリストの宴】
長編 2023/05/05 17:53 16,758view
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座卓の前に座る家族や親戚は、その様子を見てゲラゲラ笑いこけていた。

画面はここで、ブラックアウトした。

スタジオ内はシンと静まり返っていた。

静寂を破ったのは、アシスタントの花子だった。

深刻な表情で藤田に尋ねる。

「あの、、、こんな村、本当にあるんですか?」

「もちろんです。
これはフェイクでもなんでもなく、本当に実在する村なんです。
確かに、この風習というのはある意味、かなり野蛮なものです。
でもこれも立派な日本の地方文化の一つなんです。

ただ一方で、さっき映像の中で源一郎さんが言っていたように、鍋に浮かぶ、その元々を想像させる『形』というものから、この稀少な文化を毛嫌いする若い人たちが現れてきているのも、事実なんです。
これは悲しいことです。
平安の頃からH村で受け継がれているという、この伝統的な文化を、私たちの力によって守ってあげたい!
そんな熱い思いから開発されたのが、これからご紹介する商品なんです!
それでは、よろしくお願いいたします!」

盛大な拍手と歓声の中、藤田の声とともにスタジオ袖からは、大人の背丈ほどの高さの巨大な炊飯器らしきものが、台車に乗せられて現れてきた。

台車を押す二人の若い女性スタッフの後ろからは白衣姿の男性が二人付いてきていて、そのうち一人は大きな白い布袋を乗せた台車を押している。

白衣の男性二人が、藤田の隣に立つ。

「さあ、それでは皆様にご紹介致します。
私の隣の男性が株式会社ホタテ電気開発部長の、岸川昇さんです!」

盛大な拍手の中、アフロヘアーを緑色に染めた銀縁メガネの中年男性が微笑みながら礼をした。

「そして、その隣で台車の前に立っているのが皆様お馴染みの、町立歌舞伎町大学医学部の上席研究スタッフ、毒島さんです」

阿部○似の長身の毒島が、爽やかな笑顔で礼をする。

「それではホタテ電気の岸川さん、商品のご説明をお願いいたします」

藤田に言われて岸川は、巨大な炊飯器もどきの傍らに立ち、説明を始めた。

「日本の大事な地方文化の灯火を絶やしてはならない!
私たちはその熱い思いだけで8年もの間、この商品の開発に没頭してきました。
問題は、どうすれば元々の片鱗さえ想像させないくらいに形を無くしてしまうか、ということでした
そこで出来上がったのが、この究極の圧力鍋『トロトロくん1号』なのです。
ご存知の通り、通常の圧力鍋というと、単なる日常料理のお手伝いをする程度のものなんですが、この『トロトロくん1号』はそんな生易しいものなんかではありません。
こいつはどんなに固い食材でも、ごく短時間で簡単にトロトロにしてしまい、元々が何だったのかさえ分からなくしてしまうという超優れものなんです」

4/7
コメント(2)
  • ひぇっt

    2023/05/25/13:16
  • 悪夢の目白押し。短編映画にしてほしいw

    2023/07/04/15:59

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