深夜のテレビショッピング【カニバリストの宴】
投稿者:ねこじろう (149)
「こちらは大田原家のご長男である源一郎さんです。
源一郎さん、こんばんは~」
源一郎は既にかなり出来上がっているようで耳たぶまで真っ赤にしながら「どうも~」と、答えた。
角刈り頭で恰幅の良い、人の良さそうな感じをしている。
「あの、今晩は源蔵さんのお通夜ということなんですが、これは、なんだか宴会のような集まりになっていて、皆さん寛いでおられて、とても普通のお通夜という感じではないんですが、これが、この村では当たり前なんですか?」
とミカリンが質問をすると、源一郎は「亡くなった人を残された者たちで景気よく賑やかにお見送りする。これがH村のやり方なんだわ」と頭を掻きながら照れ臭そうに答える。
「ところで源一郎さん、この暖かい季節に皆さんで鍋料理というのは?」
ミカリンの質問に、源一郎は「ああ、これ?」と言って煮えたぎる鍋を指差した後、体を捻らせ、ピンクに染まった顔で、こっそりミカリンに耳打ちする。
「これはな、わしの父ちゃんなんだわ!」
「は?」
意味が分からずにミカリンが聞き返すと、改めて源一郎が説明しだす。
「うちの村ではなあ、身内が亡くなったら、埋めたりも焼いたりもせずに、家族や親戚一同で一緒にご馳走になるの!」
「ええ!!
食べちゃうんですかあ?」
「そう、そしたらな、ほら、ずっと、その人はわしたちの体の一部になるじゃろ。
そういうことで、この村の衆の体にはな、今までのご先祖様の魂が脈々と受け継がれておるんじゃ。
だからな、今もこうしてみんなで食ってあげてるの。
それがなによりの供養なんじゃ!
でもな悲しいことにな、最近の若いもんはみんなお上品になってしまったのか、形が残っておるから、無理って言う奴がおるんだわ。
全く困ったもんじゃ」
「形?」
「うん、例えば、これなんか、そうなんだけどな」
と言って源一郎は手元にある器を持ち上げると、箸でその中の一つを摘まんで、ミカリンの目前にもってくる。
湯気の立ち上るそれは、まるで何かふやけた白い芋虫のようだ。
彼女はしばらくそれを見ていたが、突然眉毛をしかめると「ゲゲエ!ちょっと、源一郎さあん、これ、『指』じゃないですかあ」と言うと、両手で口を押さえて後ろにのけ反った。
源一郎はミカリンの反応が面白いのか、さらに別のものを摘まんで、彼女の目前に持ってくる。
それは白いオタマジャクシのように見える。
「ぎゃあああ!目ん玉ああ!」
ミカリンは耐えきれずとうとう立ち上がりその場を離れようとするが、源一郎がニタニタしながら箸に摘まんだものを「ほれ、ほれ」と言って彼女に迫ってくる。
ミカリンは悲鳴を上げながら、畳の上を逃げ惑いだした。
ひぇっt
悪夢の目白押し。短編映画にしてほしいw