「それはそうだろう。キミはコイツにとって居心地の良い宿主なんだからな」
「そんな・・・」
「お嬢ちゃん、もういいんだ。確かにそうさ。今まで楽しかったぜ。体に気を付けて、長生きするんだぜ。あばよ」
「・・・そんなぁ・・・お別れなの?」泣き出す澪。
「オイオイ、自分の血を吸ってた吸血鬼の悪魔のために、泣くのかい?」
「だって、なんにも悪いことしてないのに・・・」
「してたって! 血ィ吸ってたの!」
「ずっと前に、踏んづけたりしてゴメンなさい・・・」
「気にすんな。別に痛くないからよ」
こまった顔をする神父。「ふむ・・・やりづらいな・・・」
「神父様、お願い、この子を助けて!お慈悲を!」
「そういう訳にはいかない。たとえ今は害が少なかろうが、キミの命を少しずつ削っているのは確かなんだ。せめて苦しまないように滅してあげよう」
ルーカ神父は霊力で輝く剣を地面に挿し、天を指さしながら何か詠唱している。イタリア語の詠唱だ。やがて光の粒子が集まりだし、それが天に登って行く。
澪の前のクローバーが最後の挨拶をする。
「澪、ボクのために泣いてくれて、ありがとな。神父、澪を守ってやってくれ・・・」
「承知した。心置きなく浄化されよ」神父が気を放つと、クローバーの悪魔は光の粒子となって天に登って行った。
「クローバーさん・・・さよなら」涙ぐむ澪。
「さて、もう一体だな。死神か・・・?」
上空にいる頼子が神父に叫ぶ。
「神父様、この死神、強い・・・バインドがはずされそう!」
澪と数馬にはその姿は見えていないが、神父と頼子、そして朽屋にはハッキリその姿が見えている。黒衣を着て巨大なデスサイズを持ったドクロ。真っ赤に光る目がまるで炎のように光り、口からは煙が湧き出している。まるで地獄の炎のようなそのエネルギーが、徐々に頼子の放ったバインドの輪をジリジリと焼き始めていた。
「神父様、スタンバイOKです」そう叫んだのはライフルを構える朽屋 瑠子だ。
腹ばいになって、バイポッド(ライフルの脚)を出し、土手の上からいつでも狙撃できる体勢をとっている。朽屋の射撃術はアメリカで1年間毎日特訓を積んできた本物だ。使用するライフルは日本警察も使用するM1500を朽屋の身体に合わせてカスタムしてある。そしてそのライフル弾には朽屋の霊力と魔力が組み合わさった魔弾が3発込められていた。
「OKだ。好きなタイミングでやつを葬ってくれ」
その時、ピキっと音を立ててバインドの光の輪がはじけ飛び、死神は自由を手に入れた。
そのまま猛スピードで神永 澪に飛び掛かろうとする。やはり最初の命令がまだ生きているのだ。頼子は怖くて目をつぶった。ルーカ神父は万が一のためにガーゴイル三体を出し神永 澪と麻生 数馬の防御に回っていた。
























kamaです。
朽屋瑠子シリーズも今作で6作目です。過去作品も読まれますと世界観が広がってより楽しめると思います。
また、今回のお話は以前投稿いたしました「四つ葉のクローバー」と「さようなら」そして「さようなら~その後~」というお話の解決編ともいえる内容となっていますので、合わせて読まれると楽しさも倍増かと思います。よろしくお願いします。
kamaです。
これはあくまでも個人的になのですが、今回これを書くときに・・・
朽屋瑠子=アンジュ・カトリーナ
貴澄頼子=リゼ・ヘルエスタ
神永澪=山黒音玄
四つ葉のクローバーの悪魔=ピーナッツくん
の声を当てながら書いていました。みなさんなら、どんな声をあてますか?
思わぬ展開で数馬君に憑いていた死神が違っていたなんて@_@このシリーズが実写版になったら観たい!瑠子シリーズのファンです。
↑kamaです。さっそくありがとうございます。13ページもある長編読んでくれてありがたいです。
そうですね~実写化とかあったらおもしろそうですね。漫画化やアニメでもいいですね。
どなたか奇特な同人作家の方がいたら、いかがですか?
kamaです。いくつかの誤字脱字、てにおはの修正をして、少し読みやすくいたしました。
よろしくお願いします。
Kama先生、久しぶりの新作ありがとうございます。以前から思っていたのですが本当はプロの作家でしょうか?
↑kamaです。楽しんでいただいてありがとうございます。ボクの素性は内緒にしておきます。読者の夢を壊さないのが作家たるもの・・・(てことは身バレしたら夢を壊す人なんだな)辞めておこう。
kamaです。
実はこの裏で暗躍している組織について「名前はないの?」という質問をいただいています。
ここでは封魔部隊といったり、単に組織といったり、あるいは朽屋が「お掃除部隊」と呼ぶこともありますが、設定上は名前はあります。
ただ、この組織は平安時代から陰陽師の集まりで構成された部隊であり、禁裏を魔物から守るのが主任務ということで、名前を名乗るといろいろ各方面に問題がありそうなので、物語上、名乗るのを自重しております。
「イギリス・チャーチル国王の載冠式に黒ずくめの死神が映る」
なんてニュースが流れてきました。
・・・まさかねぇ・・・。