夢と現実の狭間の鎧武者
投稿者:神助 (16)
「え!?どうしよう」このまま行けば鎧武者を斬る事ができそうだ。
けれども、本当にそれであっているのか?
ここに来て私は鎧武者を斬る事をためらい始めた。あと3メートル、あと2メートル、あと1メートル、やるしかない!
両手で握ってもずっしりと重たい日本刀を思いっきり振り下ろす!
その刃の上をなぞる様にして青い月の光がスローモーションで線を描いた。
月の光が走った後の武者の兜がゆっくりとてっぺんから左右にはがれ落ちてゆく………。
もう少しで顔が見える!
「あ……」
私は自分のベッドの上で左手を天上に伸ばしていた。
目が覚めたようだ、辺りはまだ暗い……。
閉めたはずのカーテンから満月の光が優しく差し込んでいた。
吸い込まれる様に窓辺に向かう。すると、庭にあの夢の中の武者が立っていた!
兜は被っていない、けれども後ろを向いている為顔は分からない。
『…500年……500年かかったよ……。』
そう呟いた武者はゆっくりとこちらに振り返る。
けれども満月の逆光でやっぱり顔は分からなかった。ただ、ほんの少しだけ寂しそうに笑っていた様に見えた……そんな気がした。武者は静かに消えていった。
暫くぼーっとする私。
足元に“ツンツン”「!!」うさぎが鼻っ端で合図をした。うさぎちゃんの合図で我に返る。
そしてその日以来、鎧武者の夢を見る事はありませんでした。
もっと奇妙な事に、例の心霊写真を翌日確認しようとしたところパソコンに保存していた筈の写真は無くなっていました。
武者と共に天に還ったのかもしれません。
写真の中の霊は夢の中に移動して鎧武者の成仏を手伝ったのだろうか?
真相は分かりませんが、安らかである事を祈るばかりです。
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