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心霊

神助さんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

旧トンネルからの追跡者
短編 2023/02/12 18:44 1,007view

ある夏に私の父が体験した東北の旧道での出来事です。

私の実家は東北の田舎で、車で三十分程走れば信号機もほぼなくなり田んぼや山のみの景色になるというような土地柄でした。

父をはじめこの地域の殆どの人は常に車移動。毎日車に乗る父は運転好きで、時々遠くにドライブに行く事もしばしばありました。同じ県に何年住んでいても未開の山道や旧道があり、探検するにはもってこいでした。

この日も父は知らない山道を走っていました。山道と言っても地面は結構古いものの、しっかりと舗装されている道。しかしながら後続車も対向車も一切見えて来ないといった田舎あるあるの状況。

まあ、すれ違うのも一苦労といったような道路なので対向車に関してはむしろ来ない方がありがたい。そんな事を思いながら車を走らせていた父。進むにつれ道はどんどん狭くなっていき、とうとうUターン不可能で進むより他はないというところまで来てしまった。

あたりは木々で生い茂っていて、昼間にも関わらず光が半分程しか届かない。山道は独特な静けさと空気を漂わせていた。

すると前方に旧トンネルが見えてきた。とても古いトンネルだ、かろうじて地図には載っているが、名称は不明である。

しかも車一台通るのもやっとといった感じだ。しかし引き返す事は出来ない。

父はトンネルの先に道が繋がっている事を確認し、意を決して前へ進む事にした。昼とは思えない薄暗さと、夏とは言え山の中だけあって少し肌寒いような感覚が不気味さを増幅させていた。

トンネルを前にすると何とも言い表せない不吉な予感が……。慎重に車を前進させる父。本当にギリギリである。人間の早歩きくらいのスピードで進む四駆。何とか擦らずにトンネルを脱出した。特に何事もなく安心し、その先へと進む父。

しかしそんな父の目に飛び込んできたのは、なんとついさっき通過したトンネルと似た様なトンネルだった!!再び言い知れぬ嫌な気配というか不吉さが沸き上がる!

こちらも前に進むより他、選択肢はない。

前回同様ゆっくりと前進。二つ目のトンネルもなんとか通過!

しかし、二度ある事は三度ある。三つ目のトンネルが見えてきた頃にはすっかり感覚も慣れてきていた。

三つ目のトンネルに入る父。車を前進させる…。あたりは勿論誰もいない、聞こえるのは山に響く鳥たちのさえずりと四駆のエンジン音のみ……の筈だった。

短いトンネルをと少しで抜ける、その時!薄々感じていた“何かの気配”がより一層強くなった!けれども姿は視えない!トンネルを包み込む様な何かとてつもなく巨大な気配。

そして姿は確認できないままトンネルを出た。

向こう側には国道が見える。目の前に広がるよくある道路の光景、数台の車が走っていた。

安心した父は国道に入ると、時速60~70キロ程度で走行。

その時、『ドンドンッ!』一瞬ハッとなる父!その音は明らかに誰かが父の車のドアを外から叩いた音だった。

けれどもここは国道、しかも時速60キロ以上で走行している車のドアを叩ける人間なんて居るわけがない。

すると再び『ドンドンッ!』間違いなく誰かが運転席後ろのドアを叩いているのだ!

驚いた父は一旦停車出来る場所を探し、確認してみる事にした。

コンビニの駐車場に車を止め、市内から降りる。振り返り運転席の後ろのドアを確認した。

そこにはなんと手形が二つ、くっきりとついていた!

後にトンネルについて調べてみると、そこにはかつて集落と鉄道があった事が分かった。

今は古い家屋が1軒ある程度で、鉄道に至っては全く痕跡が残っていない。そして、その集落の人々は“山の神”を祀り暮らしていたそうだ。

あれから何も起こる事はなかった。トンネルから父の車についてきた“なにか”はかつての集落の住民か、もしくは山の神だったのかもしれない。

今でもトンネルと、そこに繋がる道は存在するが人はおろか車が通る事も殆どないそうだ。

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