夢と現実の狭間の鎧武者
投稿者:神助 (16)
夢の中と現実世界の堺。
その境界線はとても曖昧なのかもしれないと思わされる出来事を体験した。
始まりはこうだ。私はある自然公園に家族で遊びに行った。
そこは文字通り自然の森に近い感じで、空気は澄んでいて時折鳥の鳴き声がこだましていた。
心地良い風が吹く中、私はトレンチコートのポケットからスマホを取り出し趣味の写真撮影を始めた。
芝生に咲く白い小さな野草の花を『パシャリ!』娘の後ろ姿を『パシャリ!』
更にその先にある少し小高くなっているところの樹林を下から『パシャリ』と写す。私としては、なかなか良いアングルで撮影出来ている。
他にも数枚『パシャリ!』この日はごくごく普通の森林浴を家族で楽しみ帰路に着いた。
夕食後、私は今日撮った写真をチェックしようとスマホを開いた。
大きな画面で見たかったので、一旦パソコンにデータを移す。
パソコンの画面で見る写真は当たり前だがごくごく普通の何気ない風景、の筈だった。三枚目の写真を見るまでは!
三枚目の写真、そこに写っていたのは樹林全体に被さる様に写り込んでいた無数の顔の様なものだった。
その数は10、いや20、30はありそうだ!
私は混乱した。それと言うのもこんなに写り込んでいるにも関わらず、現地では全く気配を感じなかったからだ。
私はたまにいる、少し“視えるタイプの人”だ。けれども、何故だか現地では分からなかった。
樹林と重なって写る30以上もあろうかという顔は皆どことなく悲しそうに見えた。
その日の夜、私はこんな不思議な夢を見た。
それは昼間に訪れた自然公園の樹林の中だった。
小高くなっている樹林を下から眺めている私。あたりは三日月の月明りのみで照らされて、何とも言えない幻想的な景色が目の前に広がっていた。
すると樹林の中から誰かが出てくる。
月明りがその人物に届く頃、季節外れな生暖かい風が頬をかすめた。
鎧武者だ!重厚な兜を被っているので表情はおろか、顔自体は全く見えない。
そして右手に携えた日本刀が月明りと木々のざわめきできらきらと揺られながら光を放っていた。
数秒間鎧武者に目を奪われてしまっていた私。自分の右手に重みを感じ我に返った。
なんと私の手の中には日本刀が握られていたのだ!
これは闘わなくてはならないのか?と直感的にそう思った。
とは言え剣術などやった事なんかない…昔空手をやっていて一度だけ全国大会に行ったきりだ。
「来るっ!!」そう思った時には鎧武者は私の目の前に来ていた。
まるでアニメのキャラクターの様な速さでスパッと切られた。
全く痛くはない…夢だからだ…。そしてゆっくりと夢から覚めた。
いつも通りの朝が始まる。朝ごはんを食べ、子供たちを学校へ送り出す。
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