【より子ちゃん事件】-中学生 朽屋瑠子-
投稿者:kana (210)
そしてまた悪夢のような日が訪れた。1944年(昭和19年)、
米軍の戦略爆撃機B-29による大規模な空襲が本格的に開始されたのだ。
都市は壊滅状態となり、教会と学校もそのあおりで焼失した。
多くの民間人が犠牲となり、その中に天使と呼ばれた少女も混じっていた。
ベアトリーチェ、享年10才。
この年、ダヴィデ神父もまた失意の中、収容所内で病死している。
翌年1945年(昭和20年)、終戦。
かろうじて生き残ることができた学院長の手によって、
教会と学校は戦後再建され今に至っている。
そしていつの頃からか、教会に少女の霊が現れるという噂が立つようになった。
その霊は今もダヴィデ神父の言いつけを守り、コンタクトできた人物にさえ、自分の本当の名前を名乗らないでいるのだ。
・・・・・・
まだあどけなさの残る小学生の朽屋瑠子は、日曜日には教会に顔を出すようにしていた。
中等科へ進学する前に、霊力のコントロールができるようルーカ神父に特訓を受けていたの
だ。ベアトリーチェの霊も朽屋のことが気に入ったようだった。
霊体の自分をハッキリと認識してくれるのは朽屋とルーカ神父くらいだったし、
朽屋はというとまるで自分の事を普通の人間と同じように扱ってくれたのだ。
11月のとある日曜日。この日、教会は信者さんたちが持ち寄った品でバザーを開催して大
賑わいであった。教会とつながる高等科の生徒たちも応援に駆け付け、屋台を出してまるで
学園祭の様相である。
「みんな楽しそう」大勢の人たちの輪を見つめる少女の霊。
誰も彼女を見ることはない。こんなに楽しそうなのに、
誰も自分にかまってくれる人はいないのだ。
そんなふうに少し寂しい気持ちで教会の中にたたずんでいると、
いつの間にかやってきた少年が一人で椅子に座っているのが見えた。
まるで自分そっくりに色白で、今にも折れてしまいそうな少年だ。
その彼が、なんと少女の方を見つめているのである。
「あの子、もしかして私が見えるのかな・・・?」
少女は恐る恐る少年に近づいた。
すると彼の方から声をかけてきたではないか。
kamaです。先ほど投稿させていただいた「より子ちゃん」の裏で起きていた一大事件を書かせていただきました。まず先に「より子ちゃん」を読まれてからこちらを読むと、面白さも倍増かと思います。
またこの「朽屋瑠子」シリーズも今回で4作目となりますので、合わせて他の朽屋瑠子シリーズも読まれると世界観が広がると思います。
あと、今回27ページもの大長編となってしまいました。頑張って読んでくれた方、ありがとうございます。・・・これだと誰も怪談朗読してくれないだろうから、そのうち自分でやろうかな・・・と思ってます。
まるで吸い込まれるような感じで、最後まで拝読させて戴きました。続きを早く読みたいです。
↑kamaです。27ページもあるのに読んでいただき感謝です。
朽屋瑠子シリーズは今後、短編をいくつか出しつつ、たまに長編みたいな、そんな感じで出して行こうと思ってます。
kamaです。
涼君が押し入れの鉱石採集セットを見つけてより子ちゃんに再開するシーンに、
『ローズクウォーツが抜け落ちた鉱石採集セットのように、
涼の心にもぽっかりと隙間が空いているようだった。』
という一文を追加させてもらいました。
・・・詩的でしょ?
まさに、涼君の鉱石セットのくだりがホロリと来ました。短編物も拝読させて戴きましたが、瑠子シリーズはスリルがあっていつまでも読みたくなります。
↑kamaです。ありがとうございます。どこかホロリとくるシーンがあるのって、いいですよね。怪談は怖い話ばかりじゃないと思いますし。
奇々怪々に「怖いボタン」以外も欲しいです~。
また楽しみにしていてくださいね。
ボクはより子ちゃんが泥だらけになっても涼君を追いかけるとこでホロリと来ました。
より子ちゃん単独の話だけ見ていると、子供の誕生日になぜ教会から出られないより子ちゃんが家まで来たのかわからなかったけど、これでつながりました。
↑kamaです。ありがとうございます。朽屋瑠子シリーズは、ボクの作品の裏で起きてる解決編みたいな構成で、オムニバス的に楽しめるようにしてます。これからもよろしくお願いします。
今まで投稿話の中で27ページという最長の話を投稿されたkama先生お疲れ様です。ところで今回の話も場合によっては改稿などで短くなるでしょうか?
↑kamaです。ありがとうございます。改稿の可能性は無いとは言えませんが、今のところは「やり切った感」が強いので、あったとしてもたぶん1年後とか、あるいは改稿しないか・・・という感じです。そうですね・・・やるとしたら戦争の歴史を説明している部分をもう少しはしょるとか・・・ですかね。でもあの部分もより子ちゃん親子がいかにして生涯を閉じたかの部分なのでバックボーンとしては残しておきたい気もしますし。まぁとりあえず今は次の作品を出すことの方を優先したいと思ってます。ありがとうございます。
色々な方の長編作品を読んでいた際にkana様のクッチャルコシリーズを見つけ、初投稿から読ませていただいているのですがこの話で先に読んでいた作品と繋がってとてもテンション上がりました…!!
本当に楽しく読ませていただいてます!!ファンです!!!