1.
ある日の朝の会で、担任の桃野先生はぼくたちに、静かに言った。
「みんなに、大事な話があるの。
来月から、ひろみちゃんが「しずくの家」に移動することが決まりました。
だから、ひろみちゃんがみんなと一緒に勉強できるのは、あと3週間と少しです」
先生は続ける。
「2年生の時にこうきくんとふみちゃんが「しずくの家」に行った時にも話したよね?
カタツムリになることは、決して辛いことじゃないの。
みんなが悲しんでたら、ひろみちゃんだってきっと行くに行けないと思う。
だから、残り3週間、みんなでいっぱい遊んで、いっぱい思い出を作ろうね」
そう言う先生の目には、涙が浮かんでいた。
帰り道、親友の優斗と「カタツムリ」のことを話していた。
「でも先生の言ってることもよくわかんないよね。
カタツムリになることが辛いことじゃないんだったら、泣く必要なんかないのにね。」
優斗が言う。
「辛いに決まってるよ」
「え?」
「もしぼくがカタツムリになったら、優斗のことも、お父さんとお母さんのことも忘れちゃうんでしょ?
おいしかったものや楽しかったことも全部忘れて、ずーっとさまようことしかできなくなるんでしょ?
辛いに決まってるよ。
辛いって言ったら、大人たちもぼくたちもよけいに辛くなるから、辛くないって言ってるだけなんだよ」
ぼくの声は震えていた。
立ち止まったぼくたちを、ぼくたちよりもずっと大きなカタツムリがゆっくりと通り過ぎて行った。
次の日の朝の会では、地域のボランティアの人による週に1度の読み聞かせがあった。
『でんでんむしになったとしくん』
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としくんは、小学2年生。
ある朝起きたら、背中の真ん中に、ぽつんとちっちゃくてかたいものができていた。
「おかあさん、これなに?」
お母さんに聞いてみた。
「そっか、としくんは、でんでんむしになるんだね。」
お母さんはそういうと、目を涙でいっぱいにしながら、ぼくをぎゅっと抱きしめた。

























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