より子ちゃん (加筆修正版)
投稿者:kana (217)
長編
2023/03/04
22:58
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「もしかしてより子ちゃんって・・・幽霊・・・なの・・・?」
その瞬間、より子ちゃんはうつむいて、少し悲しい顔になった。青白い顔がさらに青白くなって行くような…そして今度は悲しそうな目でボクを見ながら、だんだんうっすらと消えていった。
「ごめんね・・・」そう聞こえた気がした。
ボクは驚き、唖然としながらも、言ってはいけないことを言ってしまったんだと気付き、激しく後悔した。
雨が降る中、ボクは自転車を走らせ家路についた。顔を濡らしているのが雨なのか、涙なのかわからなくなっていた。
それからというもの、もう二度とより子ちゃんに会うことはなかった。
今でも思い出す。消えゆくより子ちゃんの潤んだブラウンの瞳を。
・・・・・・
「ねぇパパ・・・どうしたの?」
息子の声にハッとして我に返る。つい昔の思い出に浸ってしまった。
そうだ、今は息子のお誕生会のまっ最中だった・・・。
「あぁ、ごめんごめん。そうだ、お誕生日プレゼントがあるぞ~」
と、包を取り出そうとした時、息子がこう言ってボクに手のひらを見せてくれた。
「あのね、より子ちゃんって子がね、プレゼントだって、これくれたよ!」
「えっ・・・?」ボクは驚いて息子の手のひらを覗き込んだ。
そこには、あの懐かしい、小さなローズクウォーツが輝いていた。
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kamaです。こちらの作品は、去年のクリスマス時期に一度「クリスマス特装版」としてクリスマス色を強く出してお送りしましたが、本来のこの作品は「息子の誕生日」をきっかけに話が進むものですので、改めてこちらの作品をディレクターズカット(一度言ってみたかった)にして再掲載させていただきました。この物語の正式バージョンとなります。