マーフィーの法則:不思議と奇跡の舞台裏
投稿者:窓際族 (47)
ところが、そんなAはマーフィーの法則により変わったのです。
Aは他の人たちと違い、この法則を「自他の潜在意識を染め上げるほど、自身の顕在意識をバッチバチに改造しなければならない」というように理解したのが原因でした。
Aは寝る前にだけ潜在意識に働きかけるというような、マイルドで普通なことなどしませんでした。
自身の身体を臭くない状態にするにも、好きなお菓子を食べるにも、彼女を作るにも、何をするにしろお金が必要だと考えたAは、起きている間ずっと、四六時中、「俺は金を稼げる人間だし、そのために努力・成長できる人間だ」と意識し、時にずっと口にしていたそうです。
「私は金持ちである」だとか「私は金持ちの彼氏と結婚できる」だとかそういった願望を潜在意識に刷り込もうとする軟弱な人間とは覚悟が違いました。
これには、Aは兄弟から死んでくれ、死んでくれと言われ、このままだといずれ引き出し屋か生活保護か、あるいはノイローゼになった兄弟に殺されるか、という状況だったことも大きく影響していたと思います。
とにかくAは常に、お金のことばかり考えていました。
ここまで来るともはや怪しいオカルトやら自己啓発というよりは、狂気にも近い精神修行とでも言えるものです。
そんな生活を始めて数か月後。
今度はAは、お金だけでなくあらゆる事に関する勉強を始めました。
巷で流行っているインフルエンサーがお金について解説した本を読むようなことはもちろん、中学時代や高校時代の教科書を引っ張り出してきたり、図書館で小難しい経済の専門書を借りてきたりというようなこともするようになり、これには家族もさすがに仰天。
親はこれを見て「就職のために真面目に勉強するようになったか」と安堵したりもしましたが、一方で兄弟はAに恐怖に近い感情を覚えるようになりました。
Aをかつてド低能クズカスゴミ豚野郎とかなんとか罵っていた兄弟たちは今やAの眼中になく、何かビリビリしたオーラを漂わせていたからです。
「HUNTER×HUNTER」の、ネフェルピトー戦でのゴンさんのようだと形容した人もいました。
この頃になると、さすがにAも理解していたのでしょう。
人生一発逆転なんてことをしたいのなら、このくらいの覚悟はあって当たり前。
しかし覚悟だけでは現実は変えられない。
願望も展望も能力も、勉強なしには大きくはならない、と。
またこうして変わったAの習慣を真似しよう、自分の子供に真似させようという人も出てきました。
例えば「毎日紙にその日の目標と決意を書き、これを壁に重ねていく」など。
しかし、そのほとんどがうまくいかなかったようです。
そのため、Aの復活劇は奇跡だと表現する人もいました。
ところがAから見れば、これは不思議なことでも何でもなかったでしょう。
そして……
Aは結局どうなったかというと、紆余曲折を経て小さな会社に入社。
しかしそこでも努力を怠らず、覚悟を捨てることをせず、女遊びどころか酒を嗜むことすらせず、余計な飲み会にも参加せずといった状態だったそうです。
もちろん、そんな状態だったのでなんやかんやで辞めることになってしまったのですが、Aは負けずにその時の経験を生かして起業。
そして今では、兄弟の中で一番稼げているという状態なのだそうです。
しかし、彼は別に良い家に住んでるわけでもなければ、車は軽自動車。
特に何か贅沢をするわけでもないうえ、趣味は仕事なので金は貯まる一方……
面白かった。
Aさんは本当の本気を、自分に発揮できたのかな。