廃レストランのおじいさん
投稿者:窓際族 (47)
F県I市のとある場所に、近づいてはならないとされる廃レストランがあった。
それは海辺にある少しおしゃれな雰囲気のもので、昼間に見る分にはまったく怖いという感じはない。
おまけに俺の友達の一人は「あのレストランに昼間、人がいるのを見かけた」とまで言っていた。
ゆえに俺たちは、そこが心霊スポットであるなどとは真面目には考えていなかった。
しかしある時、ひょんなことから他の学校の奴らと肝試しをすることになった。
しかも当時中学生だった俺たちは、一見あまり怖くはないこのレストランを使って他の学校の奴らを驚かせてやろうと計画してもいた。
あらかじめ仲間を待機させておいて、そいつにオバケらしい声を出させるという寸法だ。
ところが。
俺たちが他の学校の奴らを連れてレストランに入り、待っても待ってもいるはずの仲間のいたずらは起こらない。
おまけに店内はオーシャンビューを堪能させるためか障害物や死角が少ない作りになっており、他の学校の奴らは飽き始めていた。
ああ、何やってるんだあいつ。
まさか忘れたんじゃないだろうな……
そう考えつつ、みんなで店内を出ようとしたその時。
「いらっしゃいませ」
俺たちの前に、予定にはない人影が現れた。
俺は仕込んでおいた仲間のアドリブかとも一瞬思ったが、それから発せられるしわがれた声でそうではないとすぐに分かった。
他の学校の奴の一人がそれにライトを向けると……それはおじいさんのような何かだった。
ボサボサの髪、ボロボロの服、手に持ったビール瓶、それに暗闇の中での、満面の笑顔。
そのあまりの不気味さに、イキりたい盛りの男子たちは全力で走って逃げた。
それは特に追ってはこなかったものの、少なくとも500mくらいは必死に走っていただろう。
かくして廃レストランで奴らを驚かせるという目論見は、期せずして成功した。
……俺たちも相当びっくりすることになったが。
なお後から聞いた話によれば、ボケたレストランの元オーナーがたびたびそこに来ては徘徊するということがあったのだという。
今ではそのレストランは取り壊されてしまっているが、彼はその後どうなったのだろうか……
あ、生きている方だったのですね(;´∀`)
ボケても、いらっしゃいませは忘れないのは凄い。
勿来の近くやね。
仕込みの友達は?
仕込みの友達は一足先に元オーナーと出くわして逃げとったんかな( ・∀・)?