俺は昔、先が見えなくなって、生きていけなくなって、自ら命を絶とうとしたんだ。
将来が怖くて、今をまともに送ることすら出来なくて、ただ絶望に打ちひしがれてた。
その頃俺はギャンブル中毒でさ、一応職にはつけていたけど、これがとんでもないブラック企業で、ストレスでどんどんギャンブルにハマってしまった。
休憩時間に競馬と競艇、営業行く時はパチンコでサボり散らかして、たまにある休みなんて一日中競馬場に居たよ。
話が少し逸れたね。どうでもいい所はめちゃくちゃ省略して話すと、その会社潰れたんだわ。まぁそりゃそうだ。ろくでもない会社だったし。
困ったことにその時既に借金がとんでもない額に膨らんでた。
しかも馬鹿な俺は馬鹿なことに消費者金融から借りれなくなってたから、やばい人たちから結構な額借りてた。ウ○ジマくんみたいな人達。
その人たちへの返済日が近づいてきて、ああ。俺は本当に殺されるかもしれないって思って、まともな判断がつかなくなってた。
本当に死ぬしかないんだって。
先が見えない恐怖って言うのは人間が1番怖いものなんじゃないかって本気で思ったよ。
んで、真昼間から富士の樹海に首吊るためのベルトだけ持って入ってった。
ゆっくりと死に場所を選んでた。どうせならもっと神秘的なところで。とか変なこと考えてさ。
結構時間経ってたかな。妙に頭が冴えてきて、場所なんてどうでもいいかって思い始めると、少し先の方に人の気配がしたんだよ。
思わず近くにあったデカい木に隠れた。特に意味は無いけど、なんかそうした方がいい気がしたから。
木からちょっと頭だけ出して気配がした方を見てみたんだ。その先には首吊ってる死体があって、そのすぐ近くにボッサボサの髪の女がいた。
状況が分からなすぎて、恐怖よりも興味が湧いた。
よく見てみると、女はカメラを構えていて、ブツブツ何か言ってる。
耳を澄ますと、いいねぇ、、とか、凄いなぁ、、とか言ってるんだよ。完全にやばい女だって思った。
流石に離れようと思って木の陰に戻ろうとした。その時うっかり枝を踏んじまったんだ。
女が完全にこっち振り返って、バッチリ目が合った。その女、目が死ぬほど血走ってて、完全にキマってる目してた。口からはヨダレ垂れてて、これはまずいと、立ち上がって逃げようとした。
そしたら女が あ、すみません!とか言いながら小走り気味にこっち来た。俺は怖くて腰が抜けて動けなかった。
女は俺の手にあるベルトをみて、
「今から死ぬんですか?」
とかほざきやがる。
自殺を止める気か?と思った。でもそんな優しい奴のはずがなかった。
「ぜんぜん、おきになさらず!!」
「わたしはここでちゃんとみてますから!!」
無駄に大きい声で、完全にイッちゃってる目で。でもどこか妙に無機質で感情のこもってない声だと思った。
天使だね。たぶん。
ただのイカれたキチガイ女だよ