見える従兄弟
投稿者:take (96)
短編
2023/02/14
22:11
903view
従兄弟に聞いた話です。
後に奥さんとなる彼女がひとり暮らししているアパートへ、
週末に泊まりに行きました。
そのアパートは各階に3部屋ある造りでしたが、
彼女の部屋は3階の301号室、そのフロアの一番手前の部屋でした。
3階まで階段で上がりきって、彼女の部屋の前まで来たとき、異様なものを見ました。
一番奥の部屋、つまり303号室の玄関から、にょっきりと人間の腕が出ていたのです。
玄関は閉まっていて、ドアから人の手が生えているようだったといいます。
その手首からは液体がぽたぽたと滴り落ちていました。
従兄弟は幼い時から、人には見えない存在が見える体質でした。
ただ、その存在が良いものか悪いものか、なにを伝えたいのかまでは、わかりません。
気味が悪くなった従兄弟は慌てて部屋へ入り、彼女にもそのことを黙っていました。
翌朝、彼女と朝食をとっていると、
廊下から大勢の人の声と、慌ただしい足音が聞こえてきて騒がしくなってきました。
「なにかあったのかな?」
彼女が外へ見に行き、しばらくして青い顔をして戻ってきました。
「奥の部屋の人、手首を切ってたんだって……」
従兄弟はそれを聞いて、昨夜見たのはそれだったのかと思いました。
発見されたときは、死後2日経っていたそうです。
「あれは早く見つけてもらいたかった、ってことだったんだろうな」
あのとき見ないふりをしたことを、従兄弟はいまも後悔しているといいます。
前のページ
1/1
この話は怖かったですか?
怖いに投票する 16票
※コメントは承認制のため反映まで時間がかかる場合があります。