速いオンナ_加筆修正版
投稿者:kana (210)
世間が某ウイルスに侵食されていたある日曜日のこと。
緊急非常事態だの、外出自粛だの、あまりに家に閉じこもりすぎて体中が凝り固まり、閉塞感で息が詰まりそうになっていたため、これまで自粛していた散歩を再開することにした。
「まぁマスクをして三密を避ければ大丈夫だろう」
ボクのお気に入りの散歩コースは、H駅とN駅の間を通る往復5キロの桜並木。
自然が豊富なのが散歩コースとして最適だ。
歩いていると左手に大きなS大学病院が見えてくる。まるでホテルのような立派な入院棟もある病院だ。よく見てみると、入り口付近の救急車などを停めている駐車場の一角に、大き目の白いテントが二つ出来ている。例のウイルス対策のための簡易隔離施設だ。
「ボクが病気になったらここにやっかいになるのかもな」
なんてことを考えながら遠巻きに見ていた。
さて、散歩に戻ろうかと歩き始めた時、病院のエントランスからとてもキレイな女の人が出てきた。細身で比較的長身のモデル体型。薄茶色の透けたワンピースを着ていて、中に黒っぽい短めのスカートなどが見えるオシャレなファッション。髪型はショート・ボブといったところ。
「うわ~キレイな人だなぁ~」と少し見とれてしまった。
しかもその彼女がボクと同じ散歩コースを同じ方向に向かって歩きだした。
(おっ、今日はキレイな人の後姿を眺めながら散歩できるなんて、ラッキーだな)
なんて軽く下心を持ちながら、ボクも歩きだした。
まぁ勘弁してほしい。美しいものが嫌いな人はいないと、ララァ少尉もおっしゃっている。
しばらくして「おやっ?」と思った。彼女がどんどん遠ざかっていくのである。
5メートル、10メートル、15メートル・・・・
「オイオイ、自慢じゃないけどボクだって歩くスピードはけっこう速い方なんだよ」
なのにどんどん離されていく。
20メートル、30メートル・・・
彼女の歩く動きを見ると、テンポはボクと大差ない。
もちろん彼女は背の高い人だから、ボクよりストライドが大きいのかもしれない。
「くっそ、負けてられねぇ!もう30回転ケイデンスをあげろ!」
某自転車マンガのセリフを引用して少し早歩きをしてみた。
いや、走れば追いつくかもしれないけれど、ここで走って追いつくと何かに負ける気がした。
かなり速足で歩いていく。はぁはぁ・・・だんだんこっちも息が上がってくる。
なのに、彼女との距離は一向に縮まらない。縮まらないどころかまだどんどん離されている。
40メートル、50メートル・・・
「いったいどうなってんだろ」と立ち止まって彼女の後姿をながめてみる。
美しい彼女は、赤信号も無視して横断歩道を渡ろうとする。
kamaです。こちらの作品は当初コロナ化のゴールデンウイークに書かれたものなのですが、文中にゴールデンウイークと入っていると季節性が出すぎてその時しか旬を感じられなくなるので、普通にとある日曜日にいたしました。また表現をちょこちょこ改善いたしました。
S大学病院・・・ボクの作品にちょくちょく出てくるので、覚えておいてくれるとうれしいです。
こんな美人な幽霊を遭遇された先生は羨ましいですなぁ。
↑でも、美人薄命。幽霊になってもお家に帰りたかったのかと思うと可哀そうですね。・・・いや、もしかしたら生霊で本人はまだベッドに寝ていると思いたいなぁ~~~
↑でも、美人薄命。幽霊になってもお家に帰りたかったのかと思うと可哀そうですね。・・・
いや、もしかしたら生霊で本人はまだベッドに寝ていると思いたいなぁ~~~
二重投降失礼。
病室で寝てて幽体離脱とかだったらいいけどな
久しぶりに外出れてうれしいだろうし