金縛りの連打

その日の金縛りはいつもと違う感じでした。
金縛り慣れ？している私は何十年も体験しているうちに
一つのテクニックを習得していました。
小指の先を小さく動かし力を入れ、一気に金縛りを解くという方法です。
幽霊といえども、身体全てを縛れるものではないようで特に小指の先は
盲点と言える部位でした。
３秒で金縛りを解く、それが私の特技？でもあります。

いつものように３秒で解き、さて寝るかと布団を被りました。
ところが眠りに落ちそうな瞬間に、何回も何回も金縛りにかかるのです。

「何か、ものすごくしつこい奴だな、だいたい１回解けば消えるのになあ」
時計を見ると午前４時です。
起床まであと３時間ほど、このまま起きるのも気が引けます。
「今日も仕事だから寝ます！」
私は強引に布団へもぐりこみました。

ところが、それが癪に障ったのか次の金縛りはかなり強烈なものでした。
映画やアニメで言うところのクライマックス前の決戦のようです。
私は初めて、自分の魂らしきものを引き抜かれそうになりました。
それは意識というものが、身体の下に降りて行くのです。

自分の頭が自分のお腹の辺りに来ているという変な感覚でした。
（これ、ちょっとヤバイやつかもしれない）
珍しく焦った私はありったけの祓いの真言で切り返しました。
不動明王の真言です。
「ノーマクサマンダバザラダンカン」金縛りには良く効きます。
３０回くらい唱えてやっとおさまりました。
時計を見ると午前５時です。
「１時間も格闘してたのか、腹立つ！」

慢心はいけないなと肝に銘じた出来事です。