先輩を放って車で待機するか帰ろうとも考えたが生憎と俺達の中に免許を持っているものはおらず、渋々先輩に同行する運びとなった。
移動中、何度か説得を試みたがやはり先輩の進路を遮る事は叶わず、俺達は村の入口の地蔵と三度目の邂逅を果たす。
先輩はすかさず「おお、なんか趣あるなこの地蔵」と感想を述べながら、お参りする様に手を合わせる。
そういえば俺達は手を合わせて無かったと思い、先輩に倣って同じ所作を施した。
その後、仙人に会いたいと懇願する先輩を宥めて、本丸の井戸がある小屋に案内した。
あそこの遺骨を見れば先輩もこの村のヤバさが身に染みて思い知るだろうと思い、俺達は小屋の入口前に待機して中に入っていく先輩を眺めていた。
先輩には悪いが、仙人に比べれば井戸はまだ序の口だ。
先輩は井戸の周りをぐるっと観察した後、石蓋をどかそうと一旦一人で頑張ってみるが、控え目に言って痩せ型の先輩の非力な腕力では数ミリ動かすのが限界であり、中を見る為には数十分掛かりそうな勢いだった。
先輩「手伝ってくれよ」
そう言われて俺達は渋々小屋の中に入ると、四人掛かりで一気に石蓋を寄せる。
同時に、中に充満していた異臭が解き放たれて俺達は「おええええ」とそれぞれ地面に膝を付きえずくのだが、先輩は少し訝しむだけで鼻を摘まんで立っていた。
何度嗅いでも慣れないのか、目に染みるような臭みに耐え切れずに俺達は小屋の外に駆け出し新鮮な空気を求める。
対して先輩は臭いに苦しみながらも果敢に井戸の中をペンライトで照らす。
そして、例の骨を見たのか「おお、マジであるじゃん」と呑気な感想を漏らした。
先輩「でもこれ鹿とか猪じゃね」
先輩の見解を聞いた俺達は、骨の種類とかそんなすぐわかるものなのかと思いつつも、井戸に振り返る。
井戸の中にはそれこそ何十体もの骨が密集していると言うのに、よく何の骨か分かったものだと感心した。
先輩「うわ、虫やべ」
先輩は井戸の中から出てきた蠅やコバエを手で追い払う。
そんな光景を鼻で笑っていれば、先輩は「てか、骨全然少ないじゃん」と奇妙な事を言い放つ。
思わずBが聞き返していたが、やはり井戸の中には俺達が証言した様な大量の骨が無いと主張するのだ。
それを確かめる為にはあの異臭を我慢して井戸を覗き込まなければならないが、俺達は嘘吐き呼ばわりされるのは御免だと決意を固めて小屋の中へと突入し、井戸の中を覗く。
しかし、そこには先輩の言う通り動物の骨格をした比較的真新しい骨が数体井戸の底に転がっているだけだった。
その骨には部分的に肉がこびりついて虫が湧いているが、俺達が昨日見た筈の大量の骨が跡形も無く消失していた事に三人とも頭がこんがらがった。
俺「は?どこいった?」
俺達は確かに井戸の中に遺棄された大量の骨を確認した筈だ。
にも関わらず、今現在井戸の中には数体の動物の骨しかない状況。
この奇妙な現象を理解できず俺達の脳内には「は?え?」と疑問符が飛び交うばかりだった。
先輩「おいおい、しっかりしてくれよ」
その様子を間近で見ていた先輩は、動揺を隠しきれない俺達の様子を異常に思ったのか少し強張った顔で宥めてきた。

























すげえ
めっちゃ読み応えありました
こういうのもっと読みたい
これ最高
描写がすごい
これほん怖とかの実写で見てみたいな
想像で吐き気がやばかった。怖かった。
漢字で書いた方が読みやすい言葉と、ひらがなで書いた方が読みやすい言葉がある。って文学者が言ってた。
本当に理解しているエンジニアは説明の時に専門用語を使わない。それと似ている
読み応えあるしきちんと怖い
大学二年生で平成後期生まれって書いてるから飛び級でもしたのか?と思ったけど後半って書きたかったのかな?
俺も気になった
2023年1月に投稿で夏休みの話ってことは、どんなに若くても2022年夏に大学二年生=2003年(平成15年)生
平成後期生まれとは言わないわな
細かいかもだけど、こういうとこで1回気になると一気に没入感無くなるからもうちょい設定練っといてほしい
↑
わかる。設定に引っかかると萎えるよな
俺は「排他的であればあるほど研究意欲が沸き立つ」で「オカルト好き」なのに完全に他人任せで調査に関わらない先輩が気になった
翌日迎えに来れるなら別の重要な調査と被ったとかじゃないだろうし
語り手達に状況を再確認させる人物がストーリー的に必要だったのは分かるけどちょっと萎える
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おもしろかった。