父の死後に見る夢
投稿者:我望 (3)
親父の一周忌から不思議な夢を見るようになった。
俺は高校生の頃からちょっと両親とうまくいかなくなって、反抗期の延長か、高校卒業後には意地になって家を飛び出して知り合いの伝手で工場で働かせてもらう事になった。
親父には家を出る前に殴られたし、母親の方は別に亭主関白って家庭じゃないけど、親父に従う性格だったから家を出る前に元気でやるように言われたのを覚えている。
それで、家を飛び出して五年後くらい。
俺も成人して充分一人で食べていけるくらいには生活できるようになってた時に母親から親父が亡くなったと連絡が入った時は放心状態になったものだ。
母親とは大体多くて数カ月に一度、少なくても半年に一回くらいは元気でやってるとメールをしていたのだが、今まで親父の事に触れた事は無かったからだ。
葬式の為に実家へ戻った時に聞いたが、親父は病状は絶対に俺には伝えるなと母親に口留めしていたらしい。
最初はまだそんなに親父は怒ってたのかと考えて色々と反省したものだが、母親曰く弱ってるところは見せたくないと零していたそうだ。
そう聞くと親父らしいなとは思ったが、人間失って初めて気付く生き物とはよく言ったものだ。
俺は親父の葬儀の後、生きているうちに謝っていればと実家の自室でわんわん泣いた。
それから早一年、親父の一周忌のこと。
母親に「早いもんだなあ」としみじみ呟くと、「あんたが手伝ってくれたから助かったわ」とお礼を言われた。
俺は親父の葬儀の時もそうだったが、葬儀屋との打ち合わせや連絡を母に代わってこなしていた。
勿論、母親は放心状態だったからただ一人の子供である俺がやるしかない状況だったのもあるが、やっぱり親父への償いの気持ちが強かった。
それでも母親の役に立てた事は素直に嬉しかったが、やっぱり淋しい気持ちはあった。
そして、その晩だった。
俺は夢を見た。
小学生時代の夢だった。
運動会の最中で、懐かしいグラウンドの上に俺達学童が集まり、周囲から父兄の群衆が声援を送っている。
俺はそわそわしながら群衆の中から両親を見つけ出して、手を振った。
すると、母がにっこりと笑いかけ、父がカメラを片手に構え大きく手を振って見せた。
ああ、若き頃の親父だ。
まだ黒髪で量もあるし皺も少ない。
小学生の俺はかけっこで一番になってた。
親父は一番になった俺に夢中になってカメラを向けて『かっこいいぞー!』と声を張ってたのがちょっと恥ずかしかったけど嬉しかった。
そういえば、こんな事あったなと、俺は夢の途中で目が覚めた。
懐かしいなあ。
そういった感情と一緒に涙が溢れ出た。
その朝、俺は母親と朝食をとる中、夢の話を母と語らった。
小学校時代の記憶なんて夢で見るまで殆ど忘れていたが、母の話を聞けば次々に思い出していく。
幼い頃は本当に親父に懐いてたし、可愛がってもらってた。
モヤモヤする話だ