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心霊

takeさんによる心霊にまつわる怖い話の投稿です

廃墟探索で出遭ったもの
長編 2023/01/02 12:01 6,715view
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私が大学生のときの話です。
夏休みに入る直前、友人Aに、心霊スポットに行かないか、と誘われました。
いつもつるんで遊んでいる友人の一人が車を買ったので、慣らし運転がてら県外にある『出る』という噂の廃墟ホテルへ行こうと言うのです。
私は幼少時から、不思議なものを見たり感じたりする体質で、思わぬ影響を受けて体調を崩したりすることもあったので、そういうところは避けるようにしています。
「悪い、ちょっとその日は先約があるんだワ」
そう言って断ると「本当は怖いんだろう」などとからかわれつつも、私は辞退したのです。

私は参加しなかったので、ここからは友人Aから聞いた内容を記します。

友人Aと今回車を出すBを含む4人で、夜の8時ごろ出発しました。
山を登るメインルートから逸れ、しばらく走った行き止まりにそのホテルはありました。
現地に着いたのは11時を過ぎていたそうです。
天候は快晴でしたが、じっとりと纏わりついてくる湿った空気が妙に生ぬるい8月の夜だったといいます。
近づいていくと建物の黒く大きなシルエットが不気味にのしかかってきます。

それぞれが持ってきた懐中電灯やペンライトで照らすと、外壁は木の蔦に覆われ、ひび割れのように広がっています。
窓ガラスもほとんど割られているようです。

入り口から中に入ってみると、外側同様に内部もひどい荒れ様でした。
廊下を進んで行くと、散乱したガラスが靴底でパキパキと音を立てました。
ビールや酎ハイの空き缶、おつまみやお菓子などの袋が散乱し、壁は落書きだらけです。
煙草の吸い殻や、シンナー臭いビニール袋もたくさん落ちていて、ひと目で素行のよろしくない連中が出入りしているのがわかります。

「何階がいちばんヤバいんだっけ?」
「確か5階、とか」
女性客が5階の部屋で自殺をし、その霊が出ると騒ぎになって客が激減して廃業になってしまい、さらに女性客の父親もひとり娘の死を嘆いて、このホテルの屋上から飛び降りて命を絶ったとのこと。
とりあえず全部の階を回って上まで行ってみるか、と階段を上がって各階を見てみましたが、天井や壁がところどころ崩れて、電気の配線がむき出しになっていたり、荒れ放題ではありましたが、廃墟の建物にありがちな、珍しくもない光景でした。
問題の5階もとくに変わったところはなく、屋上のドアは厳重に封鎖されていて出られないようです。
拍子抜けした4人は、早々に引き上げようということになりました。

1階まで降り、出口に向かっている最中に、
パァーーーーーーン!
と何かが破裂するような音がして4人は飛び上がりました。
その音は上の階から聞こえてきましたが、何階からはわからなかったそうです。
「なんだいまの?」
「風でドアが閉まった音かもよ」
重い金属製の部屋のドアが開閉するような風が吹いている様子はありません。
第一、そんな音ではありませんでした、クラッカーか爆竹でも鳴らしたような……。
でも、そうだとしたら誰がそんなものを?
「おい、なんだこのにおい」
4人は同時に顔をしかめました。
破裂音が鳴ってしばらくすると、なんともいえないような生臭く、嫌なにおいが漂ってきたのです。
それも外からではなく、上階から空気に乗ってにおってくるようなのです、風もないのに。
音の原因を確かめにいく気にもなれず、4人は逃げるように建物を出たそうです。

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