銃声を聴いたビーグルは、興奮してさらに大きな声で吠えたてる。
さしもの熊もグッタリした。ピクリとも動かない。
リーダーが言った「初心者さん、確認してこいよ」
初心者「エッ!!エッ!!何を確認するんですか?」
リーダー「エッじゃなくて、熊が死んでいるか、まだ息があるか、見てきてよ!」
尻込みしている初心者さんを見て、リーダーの声が荒くなってきた。
ドタバタ暴れている熊を見ただけでビビッてしまった初心者さんだ。
いかにグッタリした熊とは言え、一人で近づくのは気が引けたのに違いない。
リーダー・・・「銃があるだろッ!」
まだ生きていて暴れ出すようならその銃でトドメを刺せと言っている。
初心者さん、ここで根性を見せなければ一生笑われる。
意を決して小尾根を降りていった。
誰ともなしに小刻みに震えている初心者さんの背中に、
「オーイ弾を入れてあるか?」
「下から行くとあぶねーぞッ」
「回り込んで上から行け!」
初心者さん以外の仲間達は、熊が死んでいると言うのは分かっているが、
経験を積ませてやろうという親心から、あえて彼に行かせたのだが、
当の本人にしてみれば、こんな恐ろしい事をするのならもう猟は止めよう…と思っているに違いない。
向かいの小尾根に立った初心者さんは、上から熊を見下ろして、
どうしていいか分からずにオドオドしているのがここからでもよく分かる。
リーダー「石をぶつけろ、石を!」
足下の石を拾って熊に投げつけるのだけれど、なかなか当たらない。
熊の周りを取り囲んでいるビーグルの後ろから投げているから、20メートルは離れている。
5個目の石がようやく当たった。
その瞬間、熊の後ろ足がピックと微かに動いた。
ビーグルが5メートル引いた。
(ドッカーン!)ビックリした初心者さんは、熊に目がけて一発撃った。
ビックリしたのは我々だ。山道にペタッと顔まで付けて「伏せー!!」
しばらく声が出ない。

























kamaです。
こちらのお話の解決編として「-事件記者 朽屋瑠子-」という作品も書かせていただきました。
こちらの作品に登場したリーダーが主要メンバーとして登場します。
合わせて御覧ください。
shortの「狩の真実」から来ました。長編は読み応えがありましたー!
友人が猟をするので話を聞いたことはいくらもあるのですが、臨場感でどきどきしました。お見事です。