狩の真実
投稿者:kana (210)
(ダン!ダン!ダン!)恐ろしいほどの速射だ、続けて(ダン!ダン!ダン!)
リーダーのカービン銃だ。30連装のマガジンをつけている。
これは違反だが、実猟ではカービン銃はいかにも非力だ。
一発で駄目なら3発撃ち込めば倒せるに違いないとは、リーダーの信念だ。
初心者の散弾銃フジオートの銃声は聞こえない。
「外したな!?」直感的に判断した。
左のタツミをかわした熊は、その先の小沢(こざわ)に向かうに違いない。
熱いお茶の入ったポットを肩に掛け、レミントン1100から弾を全て抜いて、
これもポットとは逆に肩に掛け、防寒用の毛布を小脇に抱えて
300メートル先の小沢に先回りしようと一目散に走った。
目の前の小尾根をようやく越えて毛布を放り投げ、レミントン1100に装弾した。この間10秒。
「居た!」 反対側の小尾根の山肌で、熊はもがき苦しんでいる。
リーダーのカービン銃が久々にヒットしたようだ。
今晩、熊供養で酒盛りをするとき、手まね足まねで大ボラを吹かれるに違いない。
許してやろうヒーローなんだから。
ビーグルが追いついて来た。
熊の暴れ方があまりにも凄まじいので、恐れてどの犬も近づかない。
もともとビーグルは獲物は追うけれど攻撃はしない。
熊を取り巻いてキャンキャン吠えてるだけだ。
そのうち仲間が集まってきた。
かの初心者は、熊のどじ狂うさまを見て呆然としている。
ライフル5丁、ショットガン3丁、熊までの距離80メートル。
横一列に並んで一斉射撃だ。
リーダーが指示を出した。散弾銃は遠慮するように。もっともだ。
射距離80メートルで9粒丸では、3メートルものグルーピングになってしまう。
(※3メートルの範囲に弾がばらけてしまうという意味)
仮にそのうちのなん粒かが当たったとしても、
120キロを越える熊に致命傷を与えることはできない。
それよりも熊の周りにいるビーグル犬に当たるおそれがある。
5丁のライフルが一斉に火を噴く。ふた山向こうまで聞こえるかと思えるほどの大音響だ。
kamaです。
こちらのお話の解決編として「-事件記者 朽屋瑠子-」という作品も書かせていただきました。
こちらの作品に登場したリーダーが主要メンバーとして登場します。
合わせて御覧ください。