(ダン!ダン!ダン!)恐ろしいほどの速射だ、続けて(ダン!ダン!ダン!)
リーダーのカービン銃だ。30連装のマガジンをつけている。
これは違反だが、実猟ではカービン銃はいかにも非力だ。
一発で駄目なら3発撃ち込めば倒せるに違いないとは、リーダーの信念だ。
初心者の散弾銃フジオートの銃声は聞こえない。
「外したな!?」直感的に判断した。
左のタツミをかわした熊は、その先の小沢(こざわ)に向かうに違いない。
熱いお茶の入ったポットを肩に掛け、レミントン1100から弾を全て抜いて、
これもポットとは逆に肩に掛け、防寒用の毛布を小脇に抱えて
300メートル先の小沢に先回りしようと一目散に走った。
目の前の小尾根をようやく越えて毛布を放り投げ、レミントン1100に装弾した。この間10秒。
「居た!」 反対側の小尾根の山肌で、熊はもがき苦しんでいる。
リーダーのカービン銃が久々にヒットしたようだ。
今晩、熊供養で酒盛りをするとき、手まね足まねで大ボラを吹かれるに違いない。
許してやろうヒーローなんだから。
ビーグルが追いついて来た。
熊の暴れ方があまりにも凄まじいので、恐れてどの犬も近づかない。
もともとビーグルは獲物は追うけれど攻撃はしない。
熊を取り巻いてキャンキャン吠えてるだけだ。
そのうち仲間が集まってきた。
かの初心者は、熊のどじ狂うさまを見て呆然としている。
ライフル5丁、ショットガン3丁、熊までの距離80メートル。
横一列に並んで一斉射撃だ。
リーダーが指示を出した。散弾銃は遠慮するように。もっともだ。
射距離80メートルで9粒丸では、3メートルものグルーピングになってしまう。
(※3メートルの範囲に弾がばらけてしまうという意味)
仮にそのうちのなん粒かが当たったとしても、
120キロを越える熊に致命傷を与えることはできない。
それよりも熊の周りにいるビーグル犬に当たるおそれがある。
5丁のライフルが一斉に火を噴く。ふた山向こうまで聞こえるかと思えるほどの大音響だ。
























kamaです。
こちらのお話の解決編として「-事件記者 朽屋瑠子-」という作品も書かせていただきました。
こちらの作品に登場したリーダーが主要メンバーとして登場します。
合わせて御覧ください。
shortの「狩の真実」から来ました。長編は読み応えがありましたー!
友人が猟をするので話を聞いたことはいくらもあるのですが、臨場感でどきどきしました。お見事です。