呪殺
投稿者:件の首 (54)
短編
2022/11/19
21:49
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「――恐らくかなりの苦痛があったでしょう」
検死を終えた監察医が、その件の担当刑事に報告する。
「ハエは死体に付くものでしょう。生きている人間を喰うもんですかね」
監察医はタブレットでデータを見せる。
「ニクバエの中には死にたての身体や粘膜を狙う種もいます。特に今回のニクバエは、強力な外来種でした」
「脳梗塞でガツンとやられた後、ハエにじわじわか……じいさんの方の死因は?」
「ハエが先か老衰が先か両方か、藪の中です。じいさんの方と言えば、役所の職員への恨み言が書かれた日記が出てたそうじゃないですか」
「ああ、奥さんが施設に入れられて、死に目に遭えなかったって、大長編になってるぞ」
「自殺を仄めかす記述があったんでしょう?」
「『呪う』とか『自分を生け贄にする』とはあるが、認知症で文章になってねえよ。死因は両方とも病死、事件性はない、としか言いようがないな」
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