そのタクシーの運転手は
投稿者:piko (6)
「い、いえ、そんなことは」
この手の話題に弱い私は何が最善の答えなのか分からずについつい適当に否定をしましたが、運転手は沈黙を続けた後、「すみません」と話しを終えました。
その日は私の家に到着するまで一言も話す事がなく、会話も利用料金を支払う際のやり取りだけでした。
その際、料金を受け渡す時に私の手と運転手の手が触れたのですが、運転手は暫く私の手に触れたまま固まると「すみません」と謝罪した後に目深に被った制帽からじっと私を見上げていたのです。
「あ、あの、何か?」
「いえ、それではまたのご利用を宜しくお願いいたします。ありがとうございました」
何故運転手が私の事をまじまじと見つめていたのか、その時はまだ分かりませんでしたが、ただ当時の私は「変わった人だなあ」との単純な思考回路しか持ち合わせていませんでした。
後日、その事をE子に話すと、
「え、それちょっとヤバめじゃない?アンタ狙われてんじゃないの」
と言われたので、そんな筈は無いと断固否定しました。
私はこれまで人生に於いて告白された事はありませんし、初めて彼氏ができた時は私が勇気を出して告白したもので、その彼とも三ヶ月と経たず破局しています。
一言で表せば、私は可愛い部類の容姿ではないのです。
かといって、そこまで不細工ではないと思いたいのですが、もし目を付けられたのならば、恐らく平々凡々とした容姿が男から見たら「いけそう」と思われたのかもしれません。
そんな事をE子と話した三日後くらいの事。
普段通り退勤した時間帯、職場から少し出たところを歩いていれば、不意に遠くから『プップッ』とクラクションが聞こえてきました。
何だろうと思って振り返れば、道路脇に停車しているタクシーから男の人が身を乗り出して私に手を振っています。
あの運転手です。
流石にこれは待ち伏せだろうと、鈍感な私も気付きました。
かといって、ここで無視して立ち去っても逆恨みが怖いので、私は観念してタクシーへと歩み寄ります。
「どうしたんですか、こんなところで」
「この辺りまでお客様を乗せた帰りなんですが、たまたま貴女をお見掛けしたので、つい」
その無表情の顔からあからさまな嘘が出てくるのを対面にして、私はこの運転手が私用で私を付け狙っていたのではと勘繰りました。
「良かったら送りましょうか?ご自宅まででしたら私も会社に戻る道すがらになりますので。料金も頂きません」
「あ、い、いえ、流石にそれは…」
私は戸惑う反面、この運転手が意外に積極的な事に驚いていました。
しかし、運転手は半ば強引に後部座席のドアを開けて私に「さあ、遠慮なさらず」と迫ってくるのです。
このまま運転手の言う通りに乗車すればどこに連れていかれるのか分かったものじゃない。
私が運転手の申し出を突っぱねるべきかと逡巡していると、後ろから「○○さーん」と声を掛けられました。
振り返れば、同じ部署で働く後輩女Aが数人の同僚と歩いていて、「これから飲みに行くことになったんですけど、○○さんも行きません?」と駆け寄ってきます。
Aとは、普段会話をしますが、そこまで仲がいい訳ではありません。
ですが、ほとほとに困っていた私はAの提案に乗っかって「あ、じゃあ私も参加させてもらおうかな」と差し出されたAの手を取り、運転手には「すみません、そういうことなのでせっかくですがまたの機会に」とやんわりと断りました。
なにこれ怖い
タクシー業界ってホントに怪談多いらしいね
客商売やると感じるのは、生きている人間が一番こわいと言う事です。
死んだことに気づかずに仕事していたのかしら?
そしたらなんかかわいそうだな
本当なら最近の実話怪談勢が飛びつきそうな魅力的な話ですね
不思議なはなしでした。
これ人間じゃないと思う。なんか波長が合ったとかで付き纏う様になったとか?
隻眼だと運転手になれないと聞いたことがあります。実話怪談話には、幽霊電車や幽霊バスもありますし、幽霊タクシーや幽霊ドライバーも現存するのかもしれません。
うちのじいさんも片目がほとんど見えなくなってからタクシーの仕事辞めさせられて町工場で働いてたから、
この人も殉職かもしくは辞めさせられたあとに亡くなったのかもね
色情霊かもしれませんね。
だいたい、なぜ狙われたのかもわからないですよね。誰でも、いいんですかね。
男って女に対しては性以外に何の用もないんだが、
性欲のある幽霊って嫌だなw
周りのアドバイスって本当に聞くに堪えないな。全無視したら人生成功しまくりなんだが