廃病院の敷地に掛かったチェーンをくぐる。
正面玄関のガラスの自動ドアは、既に半分が割れていて、素通しの状態だった。
中学のクラスメイトである僕ら5人はガラスの破片を気にしつつ、院内に入った。
ほんの思い付きの肝試しだった。
僕達は霊安室を目指していた。
「裏口の近くにある」という、心霊スポットブログの曖昧な情報しかなかった。
ひたひたと恐怖心が押し寄せる。
危険が迫っている訳ではないのに何故なのか、よく分からなかった。
慎重に進むうち、部屋のプレートがないドアに辿り着いた。
ドアを開け、中に入る。
強い気配があった。
あの世とこの世の境界線、そんな事を意識したのかも知れない。
部屋はがらんとして、何もなかったが、その何もなさが死そのもののような感覚がした。
「帰ろうぜ」
そう言って振り向く。
すると。
後から来ていたはずのクラスメイトは、5人ともいなかった。
隠れてからかっているのか、はぐれたのか、よく分からない。
「おーい……」
大声を出そうとしたが、声がかすれた。
「おおおい!」
今度は腹に力を入れて叫んだ。
反響してくる自分の声以外、耳に入る音はなかった。
僕は独り、廃病院の外に出た。
敷地の外で懐中電灯を振りながら、10分ほど待ったが、誰も出て来なかった。
スマホでメッセージを送ろうとしたが、データが壊れたのか誰のアドレスも見つからなかった。
翌日、学校に行くと。
5人は通学して来なかった。
いや。
というよりも、元々いなかったように、教室の席は詰められていた。
彼らは神隠しにでも遭ったのかも知れない。
僕はそう考えて、昼間に何度か廃病院に来てみたが、手がかりは見つからなかった。
そして中学を卒業しても、彼らが帰って来る事はなかった。
存在そのものを隠してしまう神隠しとは。
























気になる
僕ら5人で居なくなったのも5人だけど語り手は誰なの?
凄く怖かったです。病院の怖い話案外怖かったです。