行方不明になった友人の話
投稿者:七色 (4)
Bがこっちに向かう間、俺は拾ったスマホの電源を入れ、中身を確認してみる事にした。
幸い、バッテリーは7%とギリギリ余っていた。
端末情報で所有者が分からないものかと操作すれば、そこにはAの名前が煌煌と表示される。
ああ、これでここにAが訪れていた証拠を得られた。
Aと連絡が取れなくなって漸く手がかりを掴めた事で一歩前進した気持ちだったが、ここにスマホが落ちているとなると益々Aの身に何か起きたのではと不安が増した。
一先ず、Aがここで撮影をしていた筈だと思い出し、俺はスマホに記録されている筈の動画ファイルを漁ってみた。
新着順に並んだ黒いサムネイルには、ぼんやりと光源に照らされたAの姿が辛うじて写っている。
恐らく、これがここで撮影されたものだと確信した俺は、最新のものを再生してみた。
『ええーっと……何かおかしいです。さっきから凄い視線を感じて、何か、すごい鳥肌が。ほら』
まるでユーチューバーが話す様にカメラに向かって実況するA。
頻りに周囲を警戒しながらも、カメラに腕を差し出しては鳥肌が立ったと主張するが薄暗くて満足に見えやしない。
しかし、ボソボソと喋るAの口調は歯の根が合わないもので、パニックを起こす寸前の人間の様に思えた。
『すげえ何か……見られてる感じが……、えっ』
二の腕を摩りながら警戒するAは、突如少し上を向いたまま硬直すると、真顔で口を震わせる。
一体何が……、そう思った矢先、Aは『うわあぁぁぁああ!?』と叫び声を上げると後ろに飛び跳ね、その際に突き出した足で三脚を倒してしまったのか、倒れたカメラが僅かに光源を反射させた砂壁を映す。
恐らく、この瞬間を第三者視点で撮影したものが俺宛に添付された動画なのだろう。
それからもカメラは砂壁を映したままだが、遠くの方からAの叫び声と『やだやだやだ!許してください!許してください!ああああああああ』と言う許しを乞う様な台詞がうるさいくらいに響いていた。
それはパニック映画やホラー映画でよく見る様な、壮絶なシーンを彷彿とさせる渾身の叫びだったが、Aが「何」に怯えて「何」に謝っているのは全く分からなかった。
Aは「何」を見たのか。
恐らく、俺宛に動画を送り付けた奴だ。
そいつを見てAはこんなにも取り乱しているのだと考えれば、動悸が激しくなるのを感じた。
その後も動画を見ていくと、『やだあああああ!やめろ!やめろおお!助けて!助けてええええええええ!』と喉が裂ける程の声量で叫ぶAの声が入っており、『ああああ、ああああああ……ああああああ』と怯えている声を最後に映像はブツンと途切れてしまった。
しんと静まり返った和室に佇み、俺は再び新着順に並んだサムネイル画面を暫し呆然と眺める。
Aがここを訪れていた事は分かった。
だが、この部屋で撮影中に何者かに襲われた様に見えたので、Aの安否が心配だった。
しかし、いくら不審者に襲われたからといって終始ここまで半狂乱になるものだろうか。
Aは一体何を見てここまで取り乱したのだろう。
そんな事を考えている最中、俺はふと違和感を覚える。
そういえば、ここにAが来ていて、その映像を捉えたものが俺宛に送られてきた訳だが。
だとしたら、そのカメラが撮影した位置は今俺が立っている場所から振り返った先にあるのではないか?
Aを少し高い画角から撮影した場所…。
読み応えあって面白かったです。
そういえば廃墟系のYouTuberで実際に行方不明になった人いませんでしたっけ…
心情の表現や状況を表す言葉が秀逸で、洒落怖ばりに鬼気迫る恐怖が凄く伝わりました。廃墟系YouTuberの方々にも周知させたいお話ですね。
長編なのに読んでいてしんどくない。細部の描写が凄いです。風化して粉まみれのボタンで感動しました、これは知らないと書けない…
その廃墟、第二の犠牲者が出ない事を願うばかりです。
恐ろしい体験でしたね。
気を強く持たないと。
その時の様子が鮮明に想像できます。細かい描写で分かりやすい。
絶叫しそうになった
めちゃくちゃ面白い
映像化してほしいくらい
凄く怖いかったです。この話は良かった。
いつか読んでる中でダントツ怖い。
ほんまにこえぇわこれ
ここ数年で1番怖かったかもしれない
文体に独特の書き癖があってときどき気にはなるが、内容は怖かった。
例のミイラ男がAなのかな?
とにかく読ませる怪談。今時パスワードや指紋認証ロックしていないAのガバガバさぶりはアレだが
怖すぎる…家の玄関が誰もいないのに明かりがついたことあるけれど
それ以上怖い…
今まで読んだ中で1番怖かったかも
若干最後の方に蛇足感じたけど面白かったわ。ありがとう。
低学歴ワイ、意味を知らない言葉複数あり
役所で名前が記録されていればおおよその事は分かるはずだよ、日本人なら
怖いねえ
大丈夫。ずっと見ているよ
マジで怖かった。傑作
あの頭部はAのものではないの?
Aと同じセリフを履いたよね。
そーやって呪いが繰り返される展開を想像した俺はこーゆーの身過ぎかね
Aは怪異から逃げ続けているから会えないのではないか
傑作。昼に出る怪異はガチ勢というが、まさにという感じ。
ビデオ動画、LINE、天袋に襖といった、正統ホラーの技巧にワクワクさせられつつ、2方面戦線からの合体という驚きもあって。
とても面白かった。
あかんめっちゃこわい
映像化してほしい
怖いです。漏れそう