行方不明になった友人の話
投稿者:七色 (4)
「こんなとこによく一人で泊まれるよな」
スマホのライトを点けて内装を用心深く見回しながら喋るB。
まさしくBの言う通りで、俺なら絶対に一人でこんな不気味な場所に一泊しようなんて愚かな事は出来ない。
だからBに付いてきてもらったのだが、Aは本当に一人でこんな所に訪れてあの動画の様に泊まり込んでいたのだろうか。
手前に珠暖簾が下がった部屋を見つけたので覗いてみれば、予想通り、給湯器がシンク前に取り付けられた台所スペースが広がる。
六畳ほどの作業場だが、現在も食器棚やテーブルも健在で、以前の暮らしぶりが手に取るように想像できた。
だが、棚のガラスや食器なんかは割れて散乱しているので、それらが散らばった床は足の踏み場も無い。
家の間取りは思いの外広く、この他にも幾つか部屋が存在する事が廊下を隔てる襖の数で示されていた。
次はどの部屋を覗いてみようかと考えていれば、不意にBが俺の肩を叩き「手分けして探すか」と提案する。
「お前、怖くねえの?」と聞けば、「Aが居たかどうか探るだけだろ?どうせ誰も居ないし早い所済ませて出ようぜ」と、逆に恐怖心から速やかに用事を済ませて出ていきたいと言う本心が透けて見えた。
それでもこんな昼間からライト無しでは何も見えない家の中を一人で探索したくはなかったのだが、単にビビりだと思われるのも癪なのでBの提案には時間を置いて承諾した。
するとさっそく、Bは「奥の部屋から探す」と言って廊下の突き当りの襖を引いて中へと消えていく。
こんな昼間から心霊現象だとかあろう筈が無いと自分自身を納得させる俺だが、実際に一人取り残されれば孤独感が強くなり、意味も無く周囲を見回す。
さっさと終わらせよう、そう思いながらも俺はとりあえず手前の襖を開けてみた。
襖を開けると、仏間や床の間が置かれた六畳ほどの和室が広がる。
第一印象からして空気がどんよりしている印象だったが、畳の具合や壁の色味、押し入れの配置を一瞥すれば、この部屋がAの動画の背景とよく似ている事に気付いた。
まあ、ここまで古い物件となれば大抵は似たような造りなのだが。
畳の上を歩けば腐っているのか筋子を噛み潰した様な感触が足裏から通って伝わる。
ライトを翳してみれば黒ずんだ箇所が幾つかあり、誰かが踏み抜いた形跡が点々とあった。
その流れで床の間を見れば、隅に立てかける様に置かれたリュックを見つけた。
近寄ってみれば砂埃に埋もれていない事から最近のものだと分かる。
中を覗くと、地図や手帳、空のペットボトルや携帯食料が詰め込まれていた。
食料の日付を確認すると今より数年先だった事から、やはり比較的最近持ち込まれたものだという確証を得た。
(まさかAのか?)
そう思い、改めて室内を照らして隅々をしっかりと確認する俺。
すると、仏間と反対側の隅に何かが倒れているのを見つけて近づいてみれば、それが何処かで見たような三脚だと分かると嫌な汗が噴き出てきた。
妙な焦燥感に駆られて姿勢を低くしながら床上を隈なく見渡せば、倒れた三脚から少し離れた場所に白を基調としたスマホが雑に落ちているのを見つけた。
「おーい、B!スマホ見つけた!」
俺は思わずその場で立ち上がって声を張り上げた。
部屋の多さと反比例して一つ一つの部屋は狭い造りだ。
きっと俺の声は何処かに居るBには届いた筈だ。
読み応えあって面白かったです。
そういえば廃墟系のYouTuberで実際に行方不明になった人いませんでしたっけ…
心情の表現や状況を表す言葉が秀逸で、洒落怖ばりに鬼気迫る恐怖が凄く伝わりました。廃墟系YouTuberの方々にも周知させたいお話ですね。
長編なのに読んでいてしんどくない。細部の描写が凄いです。風化して粉まみれのボタンで感動しました、これは知らないと書けない…
その廃墟、第二の犠牲者が出ない事を願うばかりです。
恐ろしい体験でしたね。
気を強く持たないと。
その時の様子が鮮明に想像できます。細かい描写で分かりやすい。
絶叫しそうになった
めちゃくちゃ面白い
映像化してほしいくらい
凄く怖いかったです。この話は良かった。
いつか読んでる中でダントツ怖い。
ほんまにこえぇわこれ
ここ数年で1番怖かったかもしれない
文体に独特の書き癖があってときどき気にはなるが、内容は怖かった。
例のミイラ男がAなのかな?
とにかく読ませる怪談。今時パスワードや指紋認証ロックしていないAのガバガバさぶりはアレだが
怖すぎる…家の玄関が誰もいないのに明かりがついたことあるけれど
それ以上怖い…
今まで読んだ中で1番怖かったかも
若干最後の方に蛇足感じたけど面白かったわ。ありがとう。
低学歴ワイ、意味を知らない言葉複数あり
役所で名前が記録されていればおおよその事は分かるはずだよ、日本人なら
怖いねえ
大丈夫。ずっと見ているよ
マジで怖かった。傑作
あの頭部はAのものではないの?
Aと同じセリフを履いたよね。
そーやって呪いが繰り返される展開を想像した俺はこーゆーの身過ぎかね
Aは怪異から逃げ続けているから会えないのではないか
傑作。昼に出る怪異はガチ勢というが、まさにという感じ。
ビデオ動画、LINE、天袋に襖といった、正統ホラーの技巧にワクワクさせられつつ、2方面戦線からの合体という驚きもあって。
とても面白かった。
あかんめっちゃこわい
映像化してほしい
怖いです。漏れそう