つぐないの家
投稿者:LAMY (11)
板垣のその発言で、どこか浮かれていた小野さんたちの空気がサッと冷えた。
ぎし、ぎし。その擬音は否応なしに、「首吊り」の三文字を連想させるものだったからだ。
「……その音、どっから聞こえてるの? 俺、何も聞こえないんだけど……」
「多分、奥の方だと思う」
奥。「駄菓子屋」としての空間ではなく、自死したお婆さんの「家」としての空間。
そこから、ぎしぎしという異音がする――板垣の言葉は若者たちの背筋を寒からしめるに十分なものだったが、しかし怖いもの知らずな人間というのは居るもので。
「よし、じゃあもっと奥まで行ってみようぜ」
グループの元締めだった田中という男が、怖気付くどころか嬉々として前に進み始めたというのだ。
「おいおい、元々幽霊見に来たんだろ俺たち。ババアの顔拝みに行こうぜ!!」
肝試しは別に幽霊を見るためにやるわけじゃないだろ、とか思いながらも、しかしその勢いに圧される形で小野さんたちは渋々奥へと進むことにしたそうだ。
ただ、発破をかけた田中が先頭を切ってずんずん進んでくれているので、恐怖心はそこまででもなかったらしいのだが……
「あっ」
声を出して、一人が足を止めた。
そして小野さんも、それと全く同じタイミングで足を止めたという。
「い、今、聞こえた……!っていうか今も聞こえてる!! うわっ、何だよこれ気持ち悪ぃ!!」
──ぎし、ぎし。ぎしぃ、ぎしぃっ。そんな音が、確かに小野さんたちの耳朶を叩いた。
いや、叩き始めた……と言うべきか。
その音は思っていたよりもひどく耳障りで、執拗で、聞き漏らすなんてことはまずありえないようなそれだった。
何故、こんなに大きな音がさっきまでは聞こえなかったのか。
その疑問は小野さんたちにとても大きな不安をもたらしたが、そんなことはお構いなしに田中はずんずん進んでいく。
「お前ら、マジで何か聞こえてんの? 俺は相変わらず何も聞こえねえんだけど」
不服そうな彼の質問に答える余力はなかった。
こんな音、こっちだって聞きたくない。そんな不平を零す余裕すら、大きな恐怖と禍々しい不安の前に呑み込まれていたのである。
ぎし、ぎし。ぎしぃ、ぎしぃっ。
音は次第に近付いてくる。
やがて――「お」と声をあげて、田中が足を止めました。
「此処っぽくね? 自殺現場」
「……うわ」
呑気に言う田中とは対照的に、板垣は顔を顰めて心底厭そうな声を出したそうだ。
そして小野さん自身もまた、彼と同じ表情をしていたはずだという。
ぎし、ぎし。未だ止まないその音は、確かに目の前の部屋の中から鳴っていた。
黄ばんで蜘蛛の巣が張った襖……恐らくは寝室であったのだろうその部屋の中で、過去に忌まわしいことがあった。そのことはもう、考えるまでもなく明らかだった。
素晴らしく、読ませられる文章。怖い。
これ、俺の地元の駄菓子屋かも……
導入のお婆さんと子供の話がいい。めっちゃ引き込まれた。
今回の作品もとてもおもしろかったです
毎回会話に引き込まれる いや引き込まれるって書いたら怖いか
目先変えて ほっこりする話しでも聞かせてほしいです
導入から引き込まれるし、退屈させない、オチでしっかり怖い話でした。
どういうジャンルの話書いても上手いんじゃないかなこの方…
ババアより嵌めた元友達の枕元に拍手しに行けよ
これ悪いのばばあじゃなく嘘ついたガキじゃね?化けて出るならソコ行けばいいのに
こえ~~~
悪いのはババアもなんだよなぁ。
「死んで逃げるなんて卑怯」だね。
死んだ後も責め苦を受けてるみたいだけど。
幽霊よりも簡単に手のひらを返しまくる人間の方がよっぽど醜悪で恐ろしいよ。
老獪な老婆が「片口」をどうして信じた。
年齢を重ねるということは、人間はウソをつき、誤解も思い込みもするという知識を経験則として身につけることだ。
だから人の告げ口よりも、自分の経験や印象、目の前の事実を大事にする。
それに反する密告者の密告など真に受けるだろうか。
良かった
怖いというか胸糞悪い話だな。タイトルも不気味でいいね。
うまいなぁ!
見えるきっかけってこう言うもんなんだろか?
駄菓子って最近ないやん!
みみたぶをたたく
いやまあ誰が悪いかを真剣に議論する場ではないから…w
描写が丁寧でいい話だと思いました
ドンマイバッバ
フォーエバーバッバ
まあババアもやり過ぎよね、みんなのお婆ちゃんたろうとする人のやる事じゃあないわ
子が死んだ後もなお悪口とかね
ぐう畜ババア
呪怨のトシオくんが首吊り死体を座りながら壁にドーンドーンってぶつけて遊んでるシーンを思い出してほのぼのした
おばあちゃんも○○ちゃんも可哀想だね。面白半分で行っちゃだめだよ。
子どもたちの焼きもちから派生したいたずらが、こんな恐ろしい形に変化するとは…。
この件に関わったかつての子どもたちも、親たち世代も、何らかの形で自分たちの過ちを問われることになるでしょうね。万引き事件を、もっと詳細に、丹念に関わってあげていれば、こんな悲劇にはならなかったはず。厳しさには優しさと愛がなければね。駄菓子屋のおばあちゃんは、ひとり暮らしだったんだろうか。冷静な判断をくだせる家族と暮らしていれば、また違った展開になっただろうに。この手の話は、後味が悪いだけに、じわじわとした怖さが残ります。
こう言う婆さんみたいに正論で人を傷つける人は無理。
本当にいい人は人を傷つける言い方はしない。
嘘をついた周りの子や万引き犯の女の子や家族にバチが当たりますように。濡れ衣を着せられた子は天国に行って幸せになりますように。
文章が読みやすくて良かったです。お話もとても良いです。
タイトルも的確な名作ですね。
是非、朗読で聴いてみたいですね。
怖くて話は良かった。万引きは余り良くないですね。罰当たりかもしれないです。
凄く怖いかったです。でも幽霊は意味がわからないです。
凄く怖いかったです
1番悪いのは無実の女の子に罪をなすりつけたクソガキだろ
↑そうだよ。なすりつけた子共だよ。
そういう子供にしたのはご両親だよ。
なんか普通に怖くない風になっているけどおばあさんがそこにいるだけでも相当な怖い話
こわいの前に、文章の書き方がとにかくお上手
情景が鮮明に浮かぶ、無駄がない、ちゃんとこわい
ストーリーも文章もかなり上手かった
ただ、そりゃ悪いのはそうだけどバッシングされながら後悔のままに死んだババアを死体蹴りするより
全ての元凶でありながら平然と勝ち逃げしてるクソガキたちに爆笑拍手しにいけやとは思ったね
自殺した子、婆さんのこと慕ってたんだろな…
自分を信じてくれず憎まれた事が、なにより悲しくて悔しくてたまらなかったのだろうな…
せめて婆さんが死ぬ前に心から謝罪をしていれば、彼女も怨霊になんかならなかっただろうに…
婆さんが自殺してからは、首謀者の子たちにいじめの矛先が向かったことは容易に想像できるね。
この環境じゃ…
1番タチが悪いのって「便乗勢」だよね。
ネットでもそう。
ぶっ殺された子どもがたのしそうならいいのだが
何故婆さんのとこにバッシングがいったのか全くわからん。嘘の密告した奴が首吊るってなら分かるが。
告げ口のガキ、取り巻きのガキでなく、婆さんがバッシングされたの??
女の子の親も担任も学校側もその子を信じてやれなかったんだよね?
学校「皆さん、あの店には行かないように」←どの口で言ってるの???
イジメられっ子自殺
イジメっ子が万引き犯だったとイジメっ子の親が知る
イジメっ子の親「婆さん所に謝りに行こう」
↑↑
これ!
本当にこれ!
これを純粋なフリした極悪と思うのは私だけか。
本当の悪魔ってこういう人だと思う。もう、おぞましい
胸糞だわ、嘘付いたガキとその仲間は呪われて早死にしてることを祈る
みんな悪を叩く正義になりたいんだよね…
爆笑拍手wをやめて成仏されますように。。南無。。
ところで、イジメっ子の親は立派な方でしょう。揉み消さずに我が子の罪を白日の下にさらした。わざわざ婆に謝りに行ったのだから、もちろん自殺した子の親にも土下座しに行ってるでしょう。下手したら自分の子供やその親である自分に対して、婆が受けたのと同じ社会的制裁が待ってるのに。
人の親たるもの、かくありたいものです。